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ツイードジャケットの裏仕立て

できるだけ暖かく着たいツイードジャケットの裏仕立ては、保温効果をもっとも期待できる総裏仕立てで作ることが多いです。ジャケットの内側の作り方には、いくつかの種類があり前述の総裏仕立てといわれるものは、ジャケットの前身頃・後ろ身頃ともすべてに裏地が付くというもので、衣服内の暖かさを保つとともに、胴裏地はできるだけすべりが良いポリエステル裏地やキュプラ裏地などで作られることから、全面に貼られるため、着心地を増すのにも役立ちます。
ハリスツイードジャケットやドネガルツイードなど、いわゆるヘビーツイードといわれる生地で仕立てる場合には、糸の太さもあり衣服内での摩擦も大きいことから、防寒目的+着用感をアップさせるためにも、総裏仕立てであることが多いですが、反面ハリスツイードといえども、できるだけ長い期間着用したい、中に着るアイテムなどで、寒暖の調整をするなどの場合には、胴裏地のうち、背部分の下3分の2程度を省いた背抜き仕立てというのも選択肢としてもちろんあります。
また、よりカジュアルに着こなし感から、ここ数年注目を集めているアンコン仕立てのジャケットとするときなどには、見返しを広くとる広見返し(大見返し)などの裏仕立てとして、軽さ重視のジャケットとする場合もあります。

ツイードランのはじまり

現在日本では自分が知る限り、ツイードラン東京、ツイードラン大阪、ツイードラン名古屋で開催されているこのイベントは、2009年にイギリスのロンドンで開催されたのがはじめだそうです。つい先日、このツイードランを主催するテッド・インヤン氏についての記事を見かけたのでご紹介します。
このテッド・インヤンさんがツイードランを企画し、現在も主催している人で、そのはじまりは氏がスコットランドのエジンバラで購入した古着のツイードパンツから。その昔、郊外に暮らす田舎貴族がハンティングに使っていたようながっしりとした作りで、いわゆるプラスフォワーズといわれるヒザ下4インチ程度のハーフパンツ。日本的名前でいえばニッカボッカ、ゴルフ用パンツといったもの。余談になりますが、昔の漫画に登場する土建屋の社長さんはなぜかこのニッカボッカをはいているのですが、それはお仕事柄運動性の高いボトムスを選ぶと、このアイテムになったのだろうかと、いま思った。
このクラシックなツイードパンツをどこに履いていこう・・、似合う場所を探したところから、その場所がなく、それなら自分で作ってしまおう。このツイードパンツでサイクリングなら、しっくりくる・・ということで、インターネットで呼びかけたことが今日のツイードランの原型になったもの。日本でも大都市が名乗りを上げているので、これからそれに続く地域で次々と開催されていくのだと思います。

ツイード感覚を楽しむライトツイード

ツイード発祥の由来を考えると、ライトツイード(おそらく和製英語)はその存在さえ許されるのだろうかと多少の疑問を感じてしまうのですが、スーツもジャケットもできるだけ長いシーズンにわたって着用したいという重衣料の傾向からは、このツイード感覚も楽しめ、秋冬はもちろん春先、秋の入り口にも着れるライトツイードというのは、なかなか便利な服地のようです。
ツイードは英国アイルランドの生活に根ざした織物で、ドネガルツイードはこの地方で飼育された羊毛をドネガル川で洗毛し、近隣の農家が手工業的に手紡ぎ、手織りで織り上げたホームスパン、素朴な風合いの織物。ハリスツイードなども同様、ざっくり感が大きな特徴となるもので、この「ざっくり感」という見た目・風合いのみを持つ織物を、生産地、素材、色柄など関係なくツイードといっているのですが、ライトツイードは、ツイードでありながら、比較的細めの糸を使用し、生地は薄めで、重さも軽いもの。ネップのような節糸も見られるのですが、デザインとして織りこまれたようにセンスが良く、素朴な風合いをもつ紡毛な感じがないため、都会的でアンコン仕立てなど、よりカジュアルなテイストで着用するジャケットの場合には、真冬に心配になるほどな軽さを持つジャケットに仕上がります。ライトツイードは、一般にツイードの風合いと考えられる織り感を、細番手の糸を主に使用し、独特の光沢感・風合いを持たせるために、シルク混としたり、カシミア混としたり、また細糸なために、より複雑な織り柄を出せるなど、現代的に進化したツイード服地。

ヘビーツイードとベビーフランネル

ここ数年の秋冬シーズンに好まれる服地の傾向を服飾用語で簡単に表わすと、このヘビーツイードとベビーフランネル。
ヘビーツイードは、重さも重く、ざっくりとした織り感が特徴的なハリスツイードジャケットドネガルツイードジャケットに代表されるような、本来お仕事着としての用途に用いられていたところ、その素朴な風合いが多くの人に好まれ、カジュアルアイテムとして広まっていったもの。ハリスツイードなどは漁師さんが寒い船上での仕事中の防寒着だったので、その暖かさは格別なもの。がっしりと頑丈で耐久性にもすぐれ、重いというところから、ヘビーツイードと呼ばれています。目付けは軽いものでも400g、重いものでは600gを超えるものも。
これと対照的なのが、ベビーフランネル。こちらはベビー(赤ちゃん)のような優しい肌触りをもつ、産毛のような生地の表面感を持つフランネル。フランネルは、一般に繊維の短い紡毛を用いて織られる服地で、この厚地の洋服地として用いられるものを特別にフラノと呼んでいますが、このベビーフランネルは、細糸で織られた梳毛フラノで、重さも軽く、Super100’sなどで起毛された毛羽立ち感は、とてもなめらか。生地感は薄手なため、カジュアルジャケットなどばかりでなく、ウォームビズな傾向からのお仕事向き服地としても多く用いられています。

ハリスツイードジャケットで上衿や袖を別生地で仕立てる

ツイードに限らずジャケットをオーダーする際には、通常オーダースーツ店に飾られている生地棚から自分のイメージに合う好みのジャケット生地1種類を選び、店主とシルエット・デザインを相談し、ジャケットをオーダーすることになります。
表題のハリスツイードジャケットの一部を別生地で仕立てることは、例えばヒジ部分につけるエルボーパッチや、共生地でもつけることが多いですが、別生地を指定することも出来る衿タブ、貼り付けられている作り方のため、比較的取り替えることが容易な、アウトポケットとした場合の、胸ポケットや腰ポケット。若干マニアックなディテールでいえば、背部分につけられる背バンドや、胸当てとしてのガンパッチなど。全体を仕立てるジャケット生地を用いても、アウトポケットとして貼り付ける方向をバイアスとしたり、タテ方向を横方向など、ストライプ柄でやると効果的です。
また、この別生地を用いてハリスツイードジャケットなどを仕立てる方法として、切り替えて作られている上衿や、身頃とは切り離されて裁断される袖部分、昔懐かしいマジンガーZの阿修羅男爵のように、半身を別生地で仕立てるなど。生地要尺という点では、ずいぶんロスとなってしまう部分の生地が必要となってしまいますが、個性的なカジュアルジャケット作りはとても楽しいです。いまちょうど流れているスマホのCM、デートにいく男性がスマホからのショッピングで選ぶ、少し無理して選んだジャケットがちょうどこんな感じです。

英国調のシルエットで仕立てるハリスツイードジャケット

12月も近くなってくると、寒さがずいぶん増してきました。この時期になるとよくいただくお問い合わせにハリスツイードのような英国生地でジャケットを仕立てる際には、英国調、ブリティッシュの特徴を備えたジャケットでないとおかしいのか・・というもの。
この考え方でいくと、ダンヒルやドーメルなど英国服地は必ずブリティッシュ調、ゼニアやロロピアナなどのイタリア服地はイタリアのテイストを色濃くもつクラシコ調でスーツ、ジャケットを仕立てなければならないということになります。
ハリスツイードは厳密にはアイルランド産。ドネガルツイードなどと同じアイリッシュツイードの仲間ですが、ハリスツイードのみは絶対的な固有名詞として揺ぎない地位を確立している感があります。
ブリティッシュスーツの特徴として上げられるところは、やはり男性的なバストライン、そして高めのウエスト位置から流れるようにフレアしたドレッシーな裾ラインというところでしょうか。高いウエスト位置から、サイドポケットの上にチケット入れもしくは小銭入れ用を目的として付けられていた、いまはその名残ですが、チェンジポケットというものも、カジュアルテイストの強いハリスツイードジャケットにはアクセントとなり相性が良さそう。しかし、ハリスツイードはアメトラもクラシコも、その他もろもろの有名セレクトショップでさえ、自社ラインで商品構成をするほどな有名生地なので、シルエットももちろんですが、生地の良さにその楽しむべきところがあると思います。

ツイードジャケットに欲しいオプションは?

カジュアルジャケットに共通するのかも知れないですが、ツイードジャケットに合わせてみたいと思うオプションについて考えてみた。
普通に吊るしで購入するジャケットでも、生地の重量感から相性の良いのが革釦でしょうか。この革釦は色が黒からはじまってこげ茶、中茶、淡茶と色合いが薄くなる茶系の釦は、茶系の釦がグレー、紺、もちろん茶系の表地には良く合うことが知られています。
その昔は、紺系のスーツには茶系の靴は合わせないのがセオリーだったように、ネイビージャケットに茶系釦というのもタブーな感じもしますが、時代は変わるもので、当然ファッション感覚にも影響が出ています。これを同じ茶系でも本水牛釦とすると、革釦のもつカジュアル感から若干のドレッシーさが生まれますので、個人的にはこの本水牛釦もとても好きですね。
上衿そのものの形、デザインを変更してしまうという点では、衿タブ付きのノッチ衿というのも見逃せません。このラッチやスロートといわれる衿タブは、防寒用に付けられていたものが、装飾目的として残されたもので、上衿とつながった形のものや、切り替えで共生地、別布で付けられたものなど。別布でつける際には、ベルベットやエクセーヌなどひと工夫したデザインがオーダーで仕立てるツイードジャケットならではです。

ツイードをアクセサリーなど小物使いで

ツイードは衣服でも主にジャケットとしてお仕立て、ご利用いただくことが多い服地というのは、だれもが思うところだと思います。実際、ツイードジャケットは秋冬カジュアルの定番。近頃では、クールビズに対してエコに暖かく、お仕事環境を整えるため、ツイードをはじめ、コーデュロイ、厚地コットン、フランネルなどで仕立てたスーツやアイテムで過ごす、ウォームビズというのもよく耳にします。
英国調回帰のスーツ事情と重なり、ハリスツイードやドネガルツイードなど英国、スコットランドと馴染みの深い服地などは、ウエスト位置が高く、着丈長め、フロントカットを大きめにとったブリティッシュスーツの特徴の濃いデザイン、例えばチェンジポケットや、カジュアルシックに衿をタブ付きなども人気です。
自分が住んでいる静岡のすぐ近くで開催されることとなったツイードラン名古屋。参加募集要項をちょっと調べてみたのですが、しっかりと上下ともツイードで仕立てた衣服に身を包み、自転車もツイードな装いに似合うクラシックなものでなければ不可か・・、といえばそうでもなく、ツイード製ならアクセサリー類などでも大丈夫らしいです。例えば、ツイード製の帽子や、財布、バッグなど、募集人員にも定員があるのですが、参加には問題なしです。

ツイードラン名古屋

英国発のツイードランは、ハリスツイードやドネガルツイードなど、いわゆるざっくりとした紡毛織物であるツイードに身を包み、自転車で走るというイベント。自転車を用いるというエコで健康的な部分と、ツイードの高いファッション性に注目したファッションブランドが主催する毎年恒例のイベントです。
日本では過去には、東京、大阪で数年前から行われていたものが、今年は名古屋でツイードランが初開催。10月26日(土)に、100人ほどの参加者が、ツイードスーツに身を包み、自転車で走ったそうです。確かに自転車に乗ってツイード服を着て走るというのは、個人の年代的にはアガサクリスティーの推理小説の一場面のような気がして、好きですね。ステッキ、マント、くちひげ、シルクハットなど、あとお散歩でしょうか。
静岡では、この同じ時期、大道芸です・・。なんと品がないといいますか、これが東京、大阪、名古屋との文化の差というものなのでしょうか。
ツイードラン静岡が開催される日ははるか遠くなのかも知れないですね。
ただ、この参加者100名というのは、これだけ大きなスポンサーがついているイベントのわりには少人数のような・・。参加するためには、ツイード必須、しかも自転車もそこらのママチャリというわけにもいかず、費用もかかるため、高い広告効果のわりには、参加者不足が悩みの種というところかも知れません。

一生着たい、ハリスツイードジャケットの裏地張替え

どこかのセレクトショップの店員さんが、ハリスツイードで仕立てたものは一生着られると言っていた。実際、生地にごわごわ感があるほど、ハリスツイードジャケットの生地表は堅めです。いわゆる、外毛といわれるもので、皮膚近くに生える内毛(産毛)と違い、かたく張りのある羊毛で織られています。
耐久性もあり頑丈というのは、ハリスツイードが本来仕事着で、極寒の船上での作業にハリス島、ルイス島の漁師さんが着ていたもの。愛用年数が重なれば、裏地のほうが消耗してしまい、薄くなって透けて見えるほどになってしまったり、擦り切れたりなど。そこまでいかなくとも、汗じみや、汚れで裏地張替えでもして、気分転換したくなるのも人情というものです。
ジャケットの裏地を張り替えるという作業は、簡単ではなく、ほどいてからまた縫い上げる作業は、逆に1着のジャケットを普通に縫うよりも大変な縫製作業。慣れた直し屋さんでも、一日がかりでも大変な仕事量で、腕に自信がない直し屋さんでは仕事そのものを受けてくれません。ジャケットの裏仕立て、総裏仕立てや背抜き仕立てなどでも、縫製作業量が異なり、裏地持ち込みで¥13000~¥14000ほどで、きれいに張替え完了です。裏地は普通のポリエステル裏地で、着分2000~3000程度というところでしょうか。キュプラほか、柄裏地などとなると、また値段が変わってきます。