ここ数年とても人気が高くなってきたスリーピーススーツ。その以前にはスーツでさえ窮屈な感じがするのに、ベストまで付けたらかしこまりすぎて余計かたい感じがする・・、きちんとしすぎ・・。というようなご意見を聞くことが多かったベスト付きのスリーピーススーツなのですが、英国調スーツに多くに方が高い関心をよせていることと、オッドベストを、カジュアルに着こなす方が増えてきた影響から、ベストそのものに人気が集まってきているのでは・・と推測します。
また、ジャケットとパンツのコーディネートをジャケパンと呼び、少し前にはカジュアルフライデー、現在ではクールビズやウォームビズの代名詞のように扱われていたものが、さらに軽装化し、ジレパンと呼ばれる組み合わせが普及していることにも影響があるような気がします。ベストのことをジレやウエストコートと呼ぶ方がいると、オーダースーツ店の店長としては、若干警戒気味にその方を観察したりしますね。この人は、なかなか詳しそうなので、また背伸びをしているので・・という具合です。
コットンの優れた特性として、夏は涼しく・冬は暖かくという衣服内外の温度調節をするという寒暖調整の性質があります。ベストそのものが袖なし胴衣として、ファッションアイテム以外に着用・非着用時に、寒暖を調整する目的に使うこともあるため、ベスト付きスリーピースとしてのオーダーはとても理にかなったものと思いますよ。
カジュアルの服地なので、3ピースとしても、ベスト単品としても、スーツ、ジャケット、スラックスなど個々のアイテムとしてもご着用がしやすいです。
「コットンの特徴」カテゴリーアーカイブ
厚手のコットンと薄手のウールはどっちが涼しい?
涼しい春夏素材とばかり高い認識のあるコットン。その性質には、繊維内に多くの空間をもつ中空構造のために、暑さを遮断する熱伝導率が低く、また優れた吸湿性から、液体としてコットンに吸収された水分を放出する際の気化熱が温度を奪い、コットンスーツやコットンパンツ内を温度・湿度とも涼しく快適に保ってくれるというものがあります。
また、コットンにはその反面、その熱伝導率の低さから衣服内の暖かな空気を逃がしずらく、冬も暖かいという性質があるため、その性質を利用したコットンにしては厚手のウィンターコットン、オールシーズンコットンと言われるものは、コットンの生地表面を毛羽立たせたりして、空気をより多く含ませ、見た目の毛羽立ち感のある暖かみとともに主に秋冬シーズン用として利用されます。
あるお客様の問い合わせから、「コットンと薄手のウールとはどちらが涼しいのだろう・・?」という質問をされたときには、正直なところ正確なデータがある訳ではなく、答えに詰まってしまいました^^
実際、ウールも「縮れ」といわれるクリンプの多さからその繊維の中に含まれる空気量は60%ともいわれ、熱伝導率の低さだけから見ればコットンのそれを上回ります。さらには、耐久性の高さ、柔軟性、不燃性、高い染色性、汚れづらいなど、冬暖かいのはもちろんですが、夏にも涼しい素材として現在の天然繊維、獣毛としての地位をもつウール。
カジュアル感の高いコットンで気分を変えてクールビズや、ノーネクタイになじみやすいコットンジャケット、裏仕立てや作り方、色柄なども含めトータルとして夏の涼しさを考えてみる必要もありそうです。。
コットンが夏に涼しく冬暖かい理由
春夏の衣服素材として高いイメージのあるコットンは、その代表的な性質としてシルクや麻などと同じく、高い吸湿性があるため。コットンの綿繊維はとても繊細なものなので、多くの水分を吸い取ることができます。そのため、コットンの内側と外側に温度差・湿度差が生じたとき、この水分を外側に発散させようとする性質が、気化熱を奪い、衣服の中に涼しさをもたらしてくれます。
気化熱の原理は、夏の暑いときに打ち水をすると、その水が蒸発するときに気化熱が奪われ、涼しさを感じられるのと同じしくみになります。
この逆にコットンの冬の暖かさは、コットン繊維の構造が中心部が空洞となる中空構造をしていること、また、コットン繊維にある天然の撚りのために、多くの空気を繊維内に含むことができ、この空気量の多さが熱伝導率を下げ、暖かさを衣服内にとどめ、逃がさない効果を生んでいます。このコットン繊維内の空気量は、コットン生地表面を毛羽立たせることで、より多くの空気を含ませることができ、秋冬、オールシーズン向きなコットン素材となります。
このように春夏のみならず、オールシーズン的にご着用いただくことができるコットン素材。夏に向けてはコットンパンツとして、オールシーズン的にはコットンジャケットを加えたジャケット+パンツの構成で、染色性の高いコットンカラーは、いろいろな楽しみ方ができる天然素材。
肌触りが良いコットン
コットンにはインド綿やパキスタン綿など短繊維から紡績されるもの、中繊維となるアメリカ綿、中国綿、オーストラリア綿、高級衣料素材とされる超長繊維、超繊維に属するエジプト綿、シーアイランドコットン(海島綿)、アメリカ産スピーマ綿など繊維長の種類によって、短繊維からデシ綿、アップランド綿、バルバデンセなどに分類されるのであるが、総じてコットン繊維の先端は丸みがあるという特徴があることから、その肌触りが良く柔らかい。
綿花は現在、世界のおよそ90カ国で生産されており、その肌触りの良さから現在の日本における衣服用繊維の約40%を占めています。日本では、平安初期頃中国から送られてきたものが初めと言われています。
特に高級綿の代名詞とされるシーアイランドコットンや、エジプト綿などの風合いはシルクのような光沢とやさしい手触り。世界の綿の90%が中繊維とされるアップランド綿となるため、シーアイランドコットンのような超長綿は希少性が高く価格も高額です。これに対し短繊維となるデシ綿からは、ふとん綿や脱脂綿などが作られます。
オーダースーツで用いられるコットンは、どれもが選別された良い繊維を紡績、織元で織られた品質の良いコットン生地。ビジネスもカジュアルの要素を取り入れて仕事をしやすく。コットンジャケットとコットンパンツ、色違いコーディネートなどで着こなすジャケパンスタイルは、春先から秋口にかけて人気のアイテムです。