コットンジャケットやコットンパンツという本来上下一揃いのものをスーツと呼ぶのに対して、異なる色柄素材で仕立てて着ることを「ジャケパン」といいます。いわゆる「替え上着」「替えパンツ」という考え方は、古くからあり、適度に装ったカジュアル定番という着こなし方。平たく言えば、上品に休日を過ごす服装とでもいうのでしょうか。
ジャケットとパンツを別素材で着ればジャケパンスタイルなのですが、お仕事用で着る場合には、ドレスコードは緩くなってきたとはいえ、やはりそこは日本人のマジメさでしょうか。特にクールビズなどできるだけ涼しく、快適に仕事をすることを目的とする場合、好まれるコットン素材も、ビビッドカラーやカラフルなものは敬遠され、ネイビー、ブラック、グレー、せいぜいがコットンジャケットやパンツでは見慣れたベージュ止まりです。
個人的には、こういったクールビズ、ジャケパンスタイルなどスーツのカジュアル化に拍車がかかったのは、ネット環境が正しく整備されてきたからに他ならないと思いますね。
いわゆるネットがらみでお仕事環境が変化し、実際に出かけなければならなかったのが、メール一本で済んでしまうようになり、室外に出ることが少なく、パソコンの前で仕事が完結してしまうことが多いお仕事では、よりコットンの肌触りの良さや快適な天然素材が好まれるようになってきたのは当然のことかも知れません。
コットンストレッチはシワになりづらく着心地が良い
カジュアル衣服用の素材ばかりでなく、ビジネスーツにも伸縮性を加えたハイテク素材というものを見るようになってからもう10年以上たつ気がします。衣服用の服地をストレッチ性のある素材で作るメリットは、ジャケットやスラックスに、伸び縮みする機能が加わることで、運動性能が増し、着心地が良くなり、伸縮性があるためにシワになりづらくまた同様の理由から、シワになってしまった際の回復力にも優れているという便利さがあります。
春夏シーズンになると、オーダースーツ店でも急に注目を集め始めるコットンスーツやコットンジャケット、少しぜいたくさはありますが、豊富な色の中から選べるコットンで仕立てるパンツというのも、クールビズというお仕事場環境が定着してきてからは、ご注文をいただく機会も増えてきました。
このコットンは元来、その繊維の硬さから、シワになりやすいとイメージされ、伸縮性はないと考えられている天然素材。このコットンにストレッチ性を持たせるためには、いわゆるポリウレタンやスパンデックスといわれる伸縮性のある繊維を混紡することになります。これら伸縮性繊維そのものの伸縮率はゴムのように500%もあるため、ほんの数%含ませることで、驚きの着心地の良さ。コットン素材の常識が覆ってしまいます。
L.L.Beanで買ったコットン製ハーフコート
まだ、若い頃給料にも余裕が出てくると、数よりも少し良いものが欲しくなる時がある。そんな時に出会ったのが、このL.L.Beanというブランドのフロントスクエアカットのなんというんでしょう、ハーフコートともいうアウタージャケット。色は明るいネイビーで、裏地にも凝っており、柄は忘れてしまったが、ベージュにペイズリーのような茶系の柄が点在していたもののような記憶がある。
衿は茶系のコーデュロイで切り替えられており、なかなかおしゃれなやつだった。しかし、自宅で洗ってしまったためか、けっこうボロになったのが早く、以降は、寒い夜に近所のタバコ自動販売機に出かける際のみに着用する、一時的寒さしのぎのための外套に成り下がってしまったもの。
その頃このコットンジャケットは1万5千円程度もして、個人的にはずいぶん奮発したのですが、それほど名前があるブランドとは知らなかった。衿裏にあるタグの名前を覚えており、あるときファッション雑誌に見た同じ名前のそのアウトドア用の衣服なども扱うそのブランドがあったときに、気が付きました。
素材費が安いためだろうか、若者ファッションにはこのコットン素材は欠かせない。コットンパンツを筆頭に、アンコンのコットンジャケットも用途が広いです。
いくら愛着のある衣服でも、最後はボロとなって、庭の片隅や倉庫で荷物の下敷きになっていたりするのを見るのは、なかなか悲しいことですね。
コットンスーツのオールシーズン化計画
コットン、綿という天然素材は、夏もののイメージとして考えられることが多い。それはやはり洗いざらしのコットンTシャツや、クロップト丈のハーフパンツやバミューダパンツなど、夏のイメージと結びつきやすいアイテムに多く用いられているため。
しかし、このコットンをスーツやジャケット、丈夫でヘビーデューティーなボトムス的なアイテム、いわゆる重衣料に限定して考えた場合、必ずしも春夏用に限定してしまうのにはもったいなさすぎる。
最近あまり見なくなってしまったが、あのダンボールを衣食住とし、公園で一時期暮らしていたという漫才師田村さん(麒麟)が、ホームレス中学生で証明している通り、食べてしまうということについては、少々の疑問が残りますが、コットン繊維の構造と同じことがいえる内部に気泡を多く含ませることができることから、風を防ぐ以外に、熱を逃さないという暖かさを保つ保温効果が、秋冬着用のコットン服地にはあり、これがコットンスーツのオールシーズン化計画を提唱するに至った大きな理由のひとつです^^
確かのその吸湿性、通気性を最大限に生かすための薄手コットンは、これは物理的に寒いと言わざるを得ませんが、その生地表面に多くの空気を含ませるための起毛感や、厚地なコットンは、当然夏には向かないウィンターコットンともいうべき、一歩下がってオールシーズンに着用できるコットンスーツといえるアイテム。
清潔感のあるナチュラルイメージのコットンスーツ
クールビズも実際のところ、7~8月と、あと9月中旬で充分ではないかと考えるファッション書生のわたしですが、コットン素材の特性を生かしてその前後もこのコットンスーツで過ごそうと考えるのはいかがなものか。
コットンでも、テーラードの仕立て。いわゆる衿付きの背広仕立てのものなら、クールビズではきちんとした身なりと考えられる。その上、コットン素材に強くあるイメージとしてそのシワ感は決して、汚すぎるものでない限り、許されるものだと思う。
なによりそのコットンスーツ着用時に期待することは、ナチュラル、清潔感、書生気分のファッションビギナーがクールビズ対策として、少ないおこづかいの中から数着を捻出するにはあまりにもエコすぎる、お財布にも優しい素材使いのスーツといわざるを得ない。
元来丈夫なコットンではありますが、夏の湿気、汗などの体臭、汚れやすい環境などを考えれば、あまり優しいライトベージュを含めた薄味なものは避けたほうが良さそう。
コットンは染色性が良く、色は比較的融通がきくため、種類も多いと認識しているが、コットンはやはりカジュアルのものとの考えが強いのか、理想とするミディアムグレーだとか、ネイビー基調のライトブルー、ベージュでもちょっと濃い目などといった色はまだ多く見ることがないのが、悩みの種です。
コットンジャケットの肩線で注意すること
コットンのように伸縮性が少ない生地で仕立てられたコットンジャケットを着用時、肩の後ろのあたりにでやすい体型的な不具合が、「突きじわ」というものです。
コットンでもポリウレタンやスパンデックスなど伸縮性のある繊維を混紡した素材で織られたものなら、こういった「突きじわ」も軽減されることがありますが、ゆとり量を少なくとる近年のタイトフィットなジャケットのシルエットでは、着用者の体型的不具合が顕著に出がちになってしまいます。
ジャケットを仕立てるのに用いられた生地の特性、伸縮性のあるなしに関わらず、アルマーニのデザインから起こったバブル期のソフトスーツや、着やすく実用的なシルエットとなるアメリカントラディショナルモデルのスーツなどは、肩巾なども広めでまわり寸法もゆったりしているために、個人の体型的特徴はでづらいです。
標準体で作られているレディーメイドのコットンスーツ、ジャケットでは避けがたいこの体型的補正は、オーダージャケットでは比較的簡単な部類の調整に入ります。
原因は、ジャケットの肩線と着用者の肩線があっていないためのもので、いわゆる着用者が怒り肩という体型をしているためのもの。オーダージャケットの場合には、肩線に沿った怒り肩補正というものをすることになりますが、レディーメイドのジャケットなどでは、肩パットの厚みを調整するなどして対応することになります。
チノパンとは
コットン生地を用いて作ったパンツにはいくつかの呼び名があり、普通にコットンパンツ、このコットンパンツを略してコッパンや、綿パンツ、綿パンなど。
素材費も安価で、丈夫、履き心地も良く、衣服の材料として広く普及しているカジュアル素材。いまどきの中学生や高校生はもっとファッションに関心が高いとは思いますが、少し前なら、まずタンスの中のファッションアイテムのひとつとして加えられるものがベージュのコットンパンツというところだったのではないでしょうか。
このコットンパンツの呼び名も、もう少しお兄さんになるとチノパンとなります。先日不幸な事故を起こしてしまった元フジテレビアナウンサー、チノパンのことではありません。いわゆる「チノクロス」といわれる双糸で厚地な綾織りコットン生地で作られたコットンパンツのことで、「チノーズ」。言葉の響きか、ファッション雑誌からの影響でしょうか。
「チノ」が第一次世界大戦中アメリカ軍が、コットン生地を中国から調達したことからこの「チノ」、チャイニーズとかそういった言葉から由来したのだと思います。
とにかく丈夫なコットンパンツは、若者のファッションアイテムとして彼女とのデートなど恭しくも晴れがましい、勝負服とされたあとは、サイズもぴったりなおじいさんの家庭菜園いじりの際の、惜しげもなくはかれるパンツなどにされてその長い一生を終えるのです。
クールビズ、ジャケパンからコットンスーツに乗り換える
ジャケパンはおじさん感覚でいえばジャケスラ。それぞれがジャケット&パンツと、ジャケット&スラックスを短く呼んだものです。ジャケットとパンツをセパレートで着るので、カジュアル感のある着心地が楽しめ、より開放的なスタイルとなるため、カジュアルフライデーなどといわれた20年前にも注目を浴びた着こなし方。
クールビズの場合には、涼しく快適にというのがそれしかないコンセプトですが、どれだけ涼しく過ごすためにきちんとしたビジネスマンとしての品位を保てるのか・・ということが、これからの課題となり、そんなところからコットンスーツこそ、クールビズに最適な素材では・・ということらしいです。実際、コットンというのは、生地価格からいっても一段お安く設定されている庶民派な素材だし、染色性のよさから、黒無地や、ビジネススーツとしては欠かせないネイビーや、グレー。ビジネススーツには、なじみが薄いとはいっても、ベージュ系の色柄は、コットンスーツの定番色ということもあり、お堅いビジネスシーンでも、決して着用しても、相手に失礼になるものではない・・という、現場の実感。
以前から思っているのですが、2着の色の異なるコットンスーツを、互い違いにセパレートスーツとして入れ替えて着用する。これが、ジャケパンスタイルです。。2着のコットンスーツに、パンツがあと2本も加われば、月曜から金曜までのビジネススーツとしての着こなしにも巾がもて、十分すぎるおしゃれで涼しいジャケパンスタイルの出来上がり。
コットンスーツは上下ばかりで着る必要は決してありません^^
コットンパンツの腰まわりのフィット感を高める
コットンは服地に用いられる素材の中でも、伸縮性の乏しい素材のため、運動量の多いパンツをオーダーで仕立てるときなどには、ちょっとした工夫をすることでよりよいご着用感のコットンパンツとすることができると思います。
近頃ではコットン生地そのものに、ポリウレタンやスパンデックスなど伸縮性の高い素材を混紡されたストレッチコットンも多く見かけるようになりました。
デザイン的な面では、ワンタックパンツやツータックパンツなどに比べ、現在流行のノータックパンツのほうがスポーティーで高いフィット感が得られることが知られていますが、その腰まわりの帯の作り方でも差がでます。
通常腰まわりには共生地で作られるメンズパンツで3.5cm巾、レディースパンツで3cm幅程度の「腰帯」というものが付けられるのですが、これを「腰帯なし」で作られるいわゆる「帯なし」仕様で仕立てると、腰まわりが楽で高いフィット感が得られます。さらには、パンツ後ろにオーダーパンツならではのデザインで仕立てられるVカット、ウエスマンにシャツなどが滑りにくいものを使用など、さらにその着用感は高まります。
また、ベルト通し(ループ)をつけないベルトレスなどの持ち出しつきや、このベルトレスの帯巾を4~5cmとするなどして前釦を2個止めとした仕様など、異なるデザインのセレクトもオーダーコットンパンツのご選択範囲です。
厚手のコットンと薄手のウールはどっちが涼しい?
涼しい春夏素材とばかり高い認識のあるコットン。その性質には、繊維内に多くの空間をもつ中空構造のために、暑さを遮断する熱伝導率が低く、また優れた吸湿性から、液体としてコットンに吸収された水分を放出する際の気化熱が温度を奪い、コットンスーツやコットンパンツ内を温度・湿度とも涼しく快適に保ってくれるというものがあります。
また、コットンにはその反面、その熱伝導率の低さから衣服内の暖かな空気を逃がしずらく、冬も暖かいという性質があるため、その性質を利用したコットンにしては厚手のウィンターコットン、オールシーズンコットンと言われるものは、コットンの生地表面を毛羽立たせたりして、空気をより多く含ませ、見た目の毛羽立ち感のある暖かみとともに主に秋冬シーズン用として利用されます。
あるお客様の問い合わせから、「コットンと薄手のウールとはどちらが涼しいのだろう・・?」という質問をされたときには、正直なところ正確なデータがある訳ではなく、答えに詰まってしまいました^^
実際、ウールも「縮れ」といわれるクリンプの多さからその繊維の中に含まれる空気量は60%ともいわれ、熱伝導率の低さだけから見ればコットンのそれを上回ります。さらには、耐久性の高さ、柔軟性、不燃性、高い染色性、汚れづらいなど、冬暖かいのはもちろんですが、夏にも涼しい素材として現在の天然繊維、獣毛としての地位をもつウール。
カジュアル感の高いコットンで気分を変えてクールビズや、ノーネクタイになじみやすいコットンジャケット、裏仕立てや作り方、色柄なども含めトータルとして夏の涼しさを考えてみる必要もありそうです。。