コットンスーツのオールシーズン化計画

コットン、綿という天然素材は、夏もののイメージとして考えられることが多い。それはやはり洗いざらしのコットンTシャツや、クロップト丈のハーフパンツやバミューダパンツなど、夏のイメージと結びつきやすいアイテムに多く用いられているため。
しかし、このコットンをスーツやジャケット、丈夫でヘビーデューティーなボトムス的なアイテム、いわゆる重衣料に限定して考えた場合、必ずしも春夏用に限定してしまうのにはもったいなさすぎる。
最近あまり見なくなってしまったが、あのダンボールを衣食住とし、公園で一時期暮らしていたという漫才師田村さん(麒麟)が、ホームレス中学生で証明している通り、食べてしまうということについては、少々の疑問が残りますが、コットン繊維の構造と同じことがいえる内部に気泡を多く含ませることができることから、風を防ぐ以外に、熱を逃さないという暖かさを保つ保温効果が、秋冬着用のコットン服地にはあり、これがコットンスーツのオールシーズン化計画を提唱するに至った大きな理由のひとつです^^
確かのその吸湿性、通気性を最大限に生かすための薄手コットンは、これは物理的に寒いと言わざるを得ませんが、その生地表面に多くの空気を含ませるための起毛感や、厚地なコットンは、当然夏には向かないウィンターコットンともいうべき、一歩下がってオールシーズンに着用できるコットンスーツといえるアイテム。

清潔感のあるナチュラルイメージのコットンスーツ

クールビズも実際のところ、7~8月と、あと9月中旬で充分ではないかと考えるファッション書生のわたしですが、コットン素材の特性を生かしてその前後もこのコットンスーツで過ごそうと考えるのはいかがなものか。
コットンでも、テーラードの仕立て。いわゆる衿付きの背広仕立てのものなら、クールビズではきちんとした身なりと考えられる。その上、コットン素材に強くあるイメージとしてそのシワ感は決して、汚すぎるものでない限り、許されるものだと思う。
なによりそのコットンスーツ着用時に期待することは、ナチュラル、清潔感、書生気分のファッションビギナーがクールビズ対策として、少ないおこづかいの中から数着を捻出するにはあまりにもエコすぎる、お財布にも優しい素材使いのスーツといわざるを得ない。
元来丈夫なコットンではありますが、夏の湿気、汗などの体臭、汚れやすい環境などを考えれば、あまり優しいライトベージュを含めた薄味なものは避けたほうが良さそう。
コットンは染色性が良く、色は比較的融通がきくため、種類も多いと認識しているが、コットンはやはりカジュアルのものとの考えが強いのか、理想とするミディアムグレーだとか、ネイビー基調のライトブルー、ベージュでもちょっと濃い目などといった色はまだ多く見ることがないのが、悩みの種です。

コットンジャケットの肩線で注意すること

コットンのように伸縮性が少ない生地で仕立てられたコットンジャケットを着用時、肩の後ろのあたりにでやすい体型的な不具合が、「突きじわ」というものです。
コットンでもポリウレタンやスパンデックスなど伸縮性のある繊維を混紡した素材で織られたものなら、こういった「突きじわ」も軽減されることがありますが、ゆとり量を少なくとる近年のタイトフィットなジャケットのシルエットでは、着用者の体型的不具合が顕著に出がちになってしまいます。
ジャケットを仕立てるのに用いられた生地の特性、伸縮性のあるなしに関わらず、アルマーニのデザインから起こったバブル期のソフトスーツや、着やすく実用的なシルエットとなるアメリカントラディショナルモデルのスーツなどは、肩巾なども広めでまわり寸法もゆったりしているために、個人の体型的特徴はでづらいです。
標準体で作られているレディーメイドのコットンスーツ、ジャケットでは避けがたいこの体型的補正は、オーダージャケットでは比較的簡単な部類の調整に入ります。
原因は、ジャケットの肩線と着用者の肩線があっていないためのもので、いわゆる着用者が怒り肩という体型をしているためのもの。オーダージャケットの場合には、肩線に沿った怒り肩補正というものをすることになりますが、レディーメイドのジャケットなどでは、肩パットの厚みを調整するなどして対応することになります。

チノパンとは

コットン生地を用いて作ったパンツにはいくつかの呼び名があり、普通にコットンパンツ、このコットンパンツを略してコッパンや、綿パンツ、綿パンなど。
素材費も安価で、丈夫、履き心地も良く、衣服の材料として広く普及しているカジュアル素材。いまどきの中学生や高校生はもっとファッションに関心が高いとは思いますが、少し前なら、まずタンスの中のファッションアイテムのひとつとして加えられるものがベージュのコットンパンツというところだったのではないでしょうか。
このコットンパンツの呼び名も、もう少しお兄さんになるとチノパンとなります。先日不幸な事故を起こしてしまった元フジテレビアナウンサー、チノパンのことではありません。いわゆる「チノクロス」といわれる双糸で厚地な綾織りコットン生地で作られたコットンパンツのことで、「チノーズ」。言葉の響きか、ファッション雑誌からの影響でしょうか。
チノ」が第一次世界大戦中アメリカ軍が、コットン生地を中国から調達したことからこの「チノ」、チャイニーズとかそういった言葉から由来したのだと思います。
とにかく丈夫なコットンパンツは、若者のファッションアイテムとして彼女とのデートなど恭しくも晴れがましい、勝負服とされたあとは、サイズもぴったりなおじいさんの家庭菜園いじりの際の、惜しげもなくはかれるパンツなどにされてその長い一生を終えるのです。

オーダースーツ Pitty Savile Row

クールビズ、ジャケパンからコットンスーツに乗り換える

ジャケパンはおじさん感覚でいえばジャケスラ。それぞれがジャケット&パンツと、ジャケット&スラックスを短く呼んだものです。ジャケットパンツをセパレートで着るので、カジュアル感のある着心地が楽しめ、より開放的なスタイルとなるため、カジュアルフライデーなどといわれた20年前にも注目を浴びた着こなし方。
クールビズの場合には、涼しく快適にというのがそれしかないコンセプトですが、どれだけ涼しく過ごすためにきちんとしたビジネスマンとしての品位を保てるのか・・ということが、これからの課題となり、そんなところからコットンスーツこそ、クールビズに最適な素材では・・ということらしいです。実際、コットンというのは、生地価格からいっても一段お安く設定されている庶民派な素材だし、染色性のよさから、黒無地や、ビジネススーツとしては欠かせないネイビーや、グレー。ビジネススーツには、なじみが薄いとはいっても、ベージュ系の色柄は、コットンスーツの定番色ということもあり、お堅いビジネスシーンでも、決して着用しても、相手に失礼になるものではない・・という、現場の実感。
以前から思っているのですが、2着の色の異なるコットンスーツを、互い違いにセパレートスーツとして入れ替えて着用する。これが、ジャケパンスタイルです。。2着のコットンスーツに、パンツがあと2本も加われば、月曜から金曜までのビジネススーツとしての着こなしにも巾がもて、十分すぎるおしゃれで涼しいジャケパンスタイルの出来上がり。
コットンスーツは上下ばかりで着る必要は決してありません^^

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コットンパンツの腰まわりのフィット感を高める

コットンは服地に用いられる素材の中でも、伸縮性の乏しい素材のため、運動量の多いパンツをオーダーで仕立てるときなどには、ちょっとした工夫をすることでよりよいご着用感のコットンパンツとすることができると思います。
近頃ではコットン生地そのものに、ポリウレタンやスパンデックスなど伸縮性の高い素材を混紡されたストレッチコットンも多く見かけるようになりました。
デザイン的な面では、ワンタックパンツツータックパンツなどに比べ、現在流行のノータックパンツのほうがスポーティーで高いフィット感が得られることが知られていますが、その腰まわりの帯の作り方でも差がでます。
通常腰まわりには共生地で作られるメンズパンツで3.5cm巾、レディースパンツで3cm幅程度の「腰帯」というものが付けられるのですが、これを「腰帯なし」で作られるいわゆる「帯なし」仕様で仕立てると、腰まわりが楽で高いフィット感が得られます。さらには、パンツ後ろにオーダーパンツならではのデザインで仕立てられるVカット、ウエスマンにシャツなどが滑りにくいものを使用など、さらにその着用感は高まります。
また、ベルト通し(ループ)をつけないベルトレスなどの持ち出しつきや、このベルトレスの帯巾を4~5cmとするなどして前釦を2個止めとした仕様など、異なるデザインのセレクトもオーダーコットンパンツのご選択範囲です。

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厚手のコットンと薄手のウールはどっちが涼しい?

涼しい春夏素材とばかり高い認識のあるコットン。その性質には、繊維内に多くの空間をもつ中空構造のために、暑さを遮断する熱伝導率が低く、また優れた吸湿性から、液体としてコットンに吸収された水分を放出する際の気化熱が温度を奪い、コットンスーツコットンパンツ内を温度・湿度とも涼しく快適に保ってくれるというものがあります。
また、コットンにはその反面、その熱伝導率の低さから衣服内の暖かな空気を逃がしずらく、冬も暖かいという性質があるため、その性質を利用したコットンにしては厚手のウィンターコットン、オールシーズンコットンと言われるものは、コットンの生地表面を毛羽立たせたりして、空気をより多く含ませ、見た目の毛羽立ち感のある暖かみとともに主に秋冬シーズン用として利用されます。
あるお客様の問い合わせから、「コットンと薄手のウールとはどちらが涼しいのだろう・・?」という質問をされたときには、正直なところ正確なデータがある訳ではなく、答えに詰まってしまいました^^
実際、ウールも「縮れ」といわれるクリンプの多さからその繊維の中に含まれる空気量は60%ともいわれ、熱伝導率の低さだけから見ればコットンのそれを上回ります。さらには、耐久性の高さ、柔軟性、不燃性、高い染色性、汚れづらいなど、冬暖かいのはもちろんですが、夏にも涼しい素材として現在の天然繊維、獣毛としての地位をもつウール。
カジュアル感の高いコットンで気分を変えてクールビズや、ノーネクタイになじみやすいコットンジャケット、裏仕立てや作り方、色柄なども含めトータルとして夏の涼しさを考えてみる必要もありそうです。。

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コットンスーツでセットアップする

セットアップスーツというのは、ジャケットパンツのサイズを組み合わせて購入することができるスーツのことで、日本語直訳で「組み立てスーツ」と言われるもの。
セットアップ・ジャケットとセットアップ・パンツのサイズや色柄が違うものを選べるので、コーディネートの巾が広がります。特に、サイズ面では、上下スーツとも同じサイズで組み合わされているレディーメイドのスーツに対して、別サイズのものを選べるため、簡単に言ってしまえばジャケットは大きいサイズ、パンツはウエストも細くモモ巾も細いサイズなど、オーダースーツにも似た寸法調整というものがやりやすくなります。
世の中にはセットアップ好きなファッション通も多く、色柄を替えて購入するセットアップスーツはいわゆる今時のジャケパンスタイルにも通じるものなのですが、夏のカジュアル定番・コットンで仕立てるジャケットパンツの着こなしは、まさしくそのセットアップが基本です。。
おしゃれな小物使いでコットンスーツをドレスアップしたり、コットンアイテムに相性の良いニットタイなどで、Vゾーンを爽やかな春夏シーズンぴったりにタイドアップするなど、腕の見せ所です^^

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コットンジャケットにつけるカラークロス

コットンジャケットを含め、テーラードで仕立てられるスーツ、ジャケットコートなどには標準ではカラークロス(衿クロス)というものが、上衿の裏側に付けられます。このカラークロスは、衿腰をなじませるために衿裏に用いられ、フラノなどの素材でできたスーツの付属。
多くのデザイン的なオプションを用意させていただくことができるコットンのオーダースーツでも、このカラークロスをご指定いただくことは少なく、一般にはおまかせいただく釦やステッチ色、裏地色などと同様、スーツ表生地に合わせた色のものが縫製職人によって選ばれて付けられます。。カラークロスは衿腰をなじませるために付けられるという本来の目的と、通常見える部分ではないという理由から、その色種類は少なく、どの縫製工場でもスーツ基本色となるブルー系、グレー系、茶系、黒程度。
このカラークロスに色柄等選びたい場合には、取り寄せのほか一部縫製でのみ数種類のベロア調の色数、無地・格子などの中から選べるオプションがあるのでおススメです。
コットンジャケットのようなすっきりとしたソリッドな生地には、衿裏のアクセントが引き立ちます。
また、スーツをご注文いただく方の中には、スーツ表生地で作られる上衿と同じ生地を裏衿にも使用する「衿裏共生地」というご指定をいただく方もいらっしゃいます。これは秋冬の衿を立てて着たいハリスツイードドネガルツイードなど厚地な半コート的ジャケットなどのアイテムに多いもの。

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コットンパンツのシルエット

オーダースーツ店としても好ましい、現在パンツのシルエット傾向は、細身でしかもその細身シルエットのために、股上が浅く、股下も短く、結果パンツ総丈も短いというもの。生地問屋さんを含め生地を扱うメーカーさんなどもさぞかし今どきの流行に苦々しい思いをしているのではないかと思ってしまいます。。
既製スーツがそのトレンドを握っているため、シェアなどほんの微々たるものに過ぎないオーダースーツ店の店長はその流行に沿ったシルエットで、お客様の体型により合ったモデルを仕立てるのが仕事です。。
コットンパンツもその細身なトレンドを反映しており、メンズのコットンパンツでは、股上の浅いローライズに加え、ノータックアイビーパンツにあるパイプドステムストーブパイプストレートレッグ・スラックスのパンツシルエット。
レディースのコットンパンツは、種類も多いので一様にはいえませんが、コットンでオーダーパンツのご注文をいただくことが多いのは、やはりヒップが小さく見えるローライズ、ヒザから裾にかけてゆるやかに広がるジェントリーフレヤードというシルエットが多いように思います。。
夏は肌に接する部分も少なく、風通りも良くするために巾広なバギーパンツセミバギーパンツオックスフォード・バッグスフルパンツなど呼び方はいろいろありますが、バッグスの名前の通り袋のようにゆったりしたパンツシルエットというものも・・。しかし、パンツのお仕立て代としては、タイトパンツもバギーパンツも基本的には現在同価格なため、あまり多くご依頼いただくとその対応に若干の工夫が必要かも知れません^^

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