セットアップスーツというのは、ジャケットとパンツのサイズを組み合わせて購入することができるスーツのことで、日本語直訳で「組み立てスーツ」と言われるもの。
セットアップ・ジャケットとセットアップ・パンツのサイズや色柄が違うものを選べるので、コーディネートの巾が広がります。特に、サイズ面では、上下スーツとも同じサイズで組み合わされているレディーメイドのスーツに対して、別サイズのものを選べるため、簡単に言ってしまえばジャケットは大きいサイズ、パンツはウエストも細くモモ巾も細いサイズなど、オーダースーツにも似た寸法調整というものがやりやすくなります。
世の中にはセットアップ好きなファッション通も多く、色柄を替えて購入するセットアップスーツはいわゆる今時のジャケパンスタイルにも通じるものなのですが、夏のカジュアル定番・コットンで仕立てるジャケットやパンツの着こなしは、まさしくそのセットアップが基本です。。
おしゃれな小物使いでコットンスーツをドレスアップしたり、コットンアイテムに相性の良いニットタイなどで、Vゾーンを爽やかな春夏シーズンぴったりにタイドアップするなど、腕の見せ所です^^
コットンジャケットにつけるカラークロス
コットンジャケットを含め、テーラードで仕立てられるスーツ、ジャケットやコートなどには標準ではカラークロス(衿クロス)というものが、上衿の裏側に付けられます。このカラークロスは、衿腰をなじませるために衿裏に用いられ、フラノなどの素材でできたスーツの付属。
多くのデザイン的なオプションを用意させていただくことができるコットンのオーダースーツでも、このカラークロスをご指定いただくことは少なく、一般にはおまかせいただく釦やステッチ色、裏地色などと同様、スーツ表生地に合わせた色のものが縫製職人によって選ばれて付けられます。。カラークロスは衿腰をなじませるために付けられるという本来の目的と、通常見える部分ではないという理由から、その色種類は少なく、どの縫製工場でもスーツ基本色となるブルー系、グレー系、茶系、黒程度。
このカラークロスに色柄等選びたい場合には、取り寄せのほか一部縫製でのみ数種類のベロア調の色数、無地・格子などの中から選べるオプションがあるのでおススメです。
コットンジャケットのようなすっきりとしたソリッドな生地には、衿裏のアクセントが引き立ちます。
また、スーツをご注文いただく方の中には、スーツ表生地で作られる上衿と同じ生地を裏衿にも使用する「衿裏共生地」というご指定をいただく方もいらっしゃいます。これは秋冬の衿を立てて着たいハリスツイードなドネガルツイードなど厚地な半コート的ジャケットなどのアイテムに多いもの。
コットンパンツのシルエット
オーダースーツ店としても好ましい、現在パンツのシルエット傾向は、細身でしかもその細身シルエットのために、股上が浅く、股下も短く、結果パンツ総丈も短いというもの。生地問屋さんを含め生地を扱うメーカーさんなどもさぞかし今どきの流行に苦々しい思いをしているのではないかと思ってしまいます。。
既製スーツがそのトレンドを握っているため、シェアなどほんの微々たるものに過ぎないオーダースーツ店の店長はその流行に沿ったシルエットで、お客様の体型により合ったモデルを仕立てるのが仕事です。。
コットンパンツもその細身なトレンドを反映しており、メンズのコットンパンツでは、股上の浅いローライズに加え、ノータック、アイビーパンツにあるパイプドステム、ストーブパイプ的ストレートレッグ・スラックスのパンツシルエット。
レディースのコットンパンツは、種類も多いので一様にはいえませんが、コットンでオーダーパンツのご注文をいただくことが多いのは、やはりヒップが小さく見えるローライズ、ヒザから裾にかけてゆるやかに広がるジェントリーフレヤードというシルエットが多いように思います。。
夏は肌に接する部分も少なく、風通りも良くするために巾広なバギーパンツ、セミバギーパンツ、オックスフォード・バッグス、フルパンツなど呼び方はいろいろありますが、バッグスの名前の通り袋のようにゆったりしたパンツシルエットというものも・・。しかし、パンツのお仕立て代としては、タイトパンツもバギーパンツも基本的には現在同価格なため、あまり多くご依頼いただくとその対応に若干の工夫が必要かも知れません^^
コットン製品のシワ対策におススメなストレッチコットン
衣服にとってシワの出やすい素材、出にくい素材というのはとても気なるところで、ビジネススーツなどに用いられるウールのオーダー服地などの場合には、サンプルなどを親指と人差し指などでひとつまみし、その後に残るシワ、短時間での回復力などを見たりすることがよくあります。
よくいわれることが、英国服地はシワになりづらいが重く仕立て上がりもかっちりカタメな感じ。イタリア服地は比較的薄地で軽く着心地は良いが、シワにはなりやすい。
特に服地が全般に薄くなる春夏シーズンには、暑さから湿度が高く汗もかくため、スーツ地がよれよれの湿り感があり、シワが目立つ・・。どうせシワになるのなら、春夏スーツは高いものでなくても・・。
コットンやリネンなど天然素材には、もともと伸縮性が少ないため、このシワについては厳しいご意見も多いところなのですが、その夏の着心地の快適さ、風合いから人気も高くまたどうしても頼りたくなってしまう服地のひとつ。。
コットンでもウールでも同じなのですが、シワをできるだけ軽減したい場合、一般的英国服地の特徴とされる目付け(生地の1平方m当たりの重さ)の重い、強い打ち込みのものを選ぶということになるのですが、その他に近年タイトスーツを代表として、クラシコスーツ、ブリティッシュスーツすべてのスーツシルエットのパターンに傾向のあるゆとり量の少ない細身なシルエット。よりシワが出やすいタイト傾向なコットンスーツ、コットンパンツには、ポリウレタンやスパンデックスを混紡したストレッチコットンというのがおススメ。イタリアブランドではラルスミアーニ、日本製の有名メーカーも良いものがあります。
コットンデニムとダンガリー
コットンデニムとダンガリーとどのような違いがあるのだろうということで、少し調べてみました。ダンガリーというと世代的なところもあると思うのですが、ブルージーンズに合わせて着るシャツ生地とイメージが強く、中学生のカジュアルアイテムには必須のワードローブで、細巾の編み込みメッシュの縄ベルトのようなものを腰に巻いている人が多かったような気がします。ダンガリーは素材(服地)のことで、ダンガリーズがシャツなどのアイテムを意味するようです。
コットンデニムはというと、もう少し上級で、色はコットンパンツの定番色ベージュ以外にもコットンの染色性の良い所を活かし、黒や赤、オレンジ、水色などカラードコットンを用いて作ってあるジーンズに代わるボトムス。インナーとしての用途は少なく、羽織るジャケットや、やはりコットンデニムパンツが主用途です。
正確には、ダンガリーはデニムを薄地にしたもので、織りはダンガリーもデニムも同じく綾織り(ツイル)ですが、径糸と緯糸に用いる晒し糸と染め糸がそれぞれ逆に使っているところに大きな違いがあります。
ダンガリーはコットンデニムより薄地なものなので、インナーとしてよく着ていたシャツ生地だったというのはうなずけるところ。コットンデニムはコットンで仕立てるパンツ(オーダーパンツ)の素材としても定番は「ベージュ」「白」「黒」「オリーブグリーン」「ネイビー」、更に多くの色種類もあります。
オーダースーツ Pitty Savile Row
コーデュロイもコットン(綿)でできています
子供の頃によくはいたパンツがコーデュロイという方も多いのではないでしょうか。その当時はコール天などといっていたと思います。大人が着るとそれはコーデュロイパンツ、コーデュロイスーツ、ジャケット。ずいぶん高級感のある響きになります。
その年によって流行があり、ここ数年は3ミリ程度の細畝が好まれているようで、仕上がり感もすっきりで、この細畝巾のコーデュロイをピンウェール・コーデュロイ、太畝巾のものをワイドウェール・コーデュロイと呼びます。一般にコーデュロイはこの畝を特徴とした木綿地(コットン地)ということになりますが、中にはウール・コーデュロイといわれるものなどもあり、畝のあるもの=コーデュロイと考えれられているところもあるようです。
コットンは、通気が良く吸湿性が高いというイメージが強いため、起毛感があり柔らかで暖かな手触りのあるコーデュロイがコットンでできていると知った人は、少し不思議な感じがするようです。もちろん、コットンで作られたコットンジャケットやコットンパンツは、夏用アイテムとして愛用される方が多いことは間違いないのですが、そのコットン繊維の中空構造から、空気を多く含み自然のサーモスタット的役割をしてくれる秋冬に暖かいアイテムであるという一面も。特に、産毛のように起毛されたコーデュロイの生地表面はより多くの空気を含み、暖かさを逃がさないという大事な役目を果たしています。
コットンスーツをアンコン仕立てで
アンコン仕立てのジャケットは、春夏シーズンになるとにわかに注目度が上がってしまうアイテム。難しい言い方をすればアンコンストラクティブ(無構築な)ということらしいのですが、肩パッドや芯地・付属をほとんど使わずに作ってあるジャケットの仕様。
このアンコン仕立てのジャケットは、秋冬シーズンのハリスツイードやフラノなどにも用いられることがあるのですが、特にはコットンスーツやリネンスーツとの相性が抜群に良いです。コットンの優れた吸湿性・通気性と軽く、裏地さえ付けない場合があるアンコン仕立てが、夏仕立てに向いているということから。
ジャケットの裏仕立てには、秋冬仕立てといわれる総裏仕立て、裏仕立て標準の背抜き仕立て、夏仕立てとなる半裏仕立てなど、その他にもいくつかありますが主なところはこの3つ。また、広見返しの裏仕立ては、コットンで用いると胴裏部分まで見返しを広く取るため、身体にコットンが直接ふれ、さらっとした肌触りが清涼感を増すのに役立ちます。
オーダースーツでも、アンコン仕立てというものがここ数年シルエットパターンとして普及しだしており、アンコンならオーダースーツでなくてもという気がしないでもないのですが、当然寸法指定などから、理想的なシルエットを構築できるオーダースーツ。この春夏シーズン、コットンスーツ+アンコン仕立ての組み合わせは見逃せないかも知れません。
オーダースーツ Pitty Savile Row
クールビズにコットンを選ぶ
衣服に使われているコットン素材を考えれば、どれだけコットンが人の生活に用いられてきた天然素材であるかわかる。
カジュアルフライデーからというより、それ以前からのスーツのカジュアル化は、春夏シーズンには、温暖化を防ぐためという環境庁の旗振りではじまったクールビズで大きく動き出した感があります。自分など当時の小池百合子環境大臣がメディアにご出演になるたびに、正直なところ苦々しい気持ちになるのですが、同様のお気持ちをもつご同僚も多いのではないかと思います。
しかし、そうばかりも言っておられず、クールにエコに春夏シーズンを過ごすための方法として、おススメなのがコットン素材。色柄をブラックコットンや、ネイビー、グレーなどを選べばビジネス用に着るコットンスーツやコットンパンツとしては最適素材。ジャケット&パンツのジャケパンスタイルなら、イタリア製ラルスミアーニをはじめとしたストレッチコットンというものもいいです。
ただ、温暖化を防ぐためのクールビズが、震災以降は、確かに涼しく過ごすために衣服を軽量化するという本筋では同じですが、温暖化を抑制する原発にはダメ出しをしながらというところに内容の変化があるようです。
コットンはその繊維の先端が丸く、アンダーウエアとしても肌ざわりが良い天然素材ですね。
オーダースーツ Pitty Savile Row
コットンコードで作る夏のコットンパンツ
細い畝織りの生地をコードレーンといいます。本来コードレーンはコード織りの商標名であったのですが、商標名としてでなく、細い畝織り地・コードレーンとして広く知られるようになりました。
このコード織りされたコードレーンを、コットンを用い織られたものを、特にコットンコードといいます。このコットンコードは、夏用のコットンスーツやコットンジャケット、コットンパンツとして爽やかな着心地を与えてくれる、夏用の快適素材。生地表面の凸凹感は、肌に直接に接する面積を減らしてくれるため、べたつきません。天然素材コットンの吸湿性、通気性の高さが夏に快適な爽快感をもたらしてくれることは言うまでもなく、見た目にも涼しいコットンコード、白地に薄いブルーのコットンコードは、まさしく夏の避暑地にぴったりな定番アイテムといっても過言ではありません。
涼しげで品の良いライトグレー+白地のコットンコードを上下スーツで着てみたり、また、それぞれジャケット、スラックスとして着用するなど、コーディネートの巾もさまざま。プレッピーなアイビースタイルにも、少し目立つ感じなコットンコードですが、クラシックパターンといえるほど定着している色柄なので、自然となじみます。
コットンパンツをオッドパンツとして作るなら、少し細身、パイプドステムなシルエットのノータック、パンツの折り返しは多めに6cm。靴底がしっかりとしたクラシコな靴や、カジュアルな靴でもソールのこば張りが強めなものを選びます。
コットンパンツを補修するときの注意
コットンの生地は、カジュアル素材の中でも比較的安価で良い所ばかりが目立つ主に春夏に用いられる素材ですが、その反面、伸縮性がない若しくは少ないというコットンの特徴は、コットンパンツをはじめコットンジャケット、スーツなどの着用感、補修するときなどにも影響します。
コットンの良い特徴、長所をあげれば、通気性・吸湿性が良い、繊維の先に丸みがあり織り上がったコットン生地の肌ざわりは滑らか。この長所は、シーアイランドコットンやエジプト綿など、繊維の細い高級綿ほど顕著。コットン生地そのものを薄く作ることができるということもあり、高級衣服に用いられるコットン生地となります。
ジャケットに比べてパンツは、特にウエストまわりなど直接身体にフィットする部分なため、体型の変化に影響されやすく、コットンジャケットの調整は不要でも、コットンパンツのウエスト調整は必要な場合が多くあります。コットンのウエスト調整を含め、縫製したミシン目を外し、再縫製する際のミシン目の穴は、コットン素材に伸縮性がないために、残ってしまいがちです。調整後は、比較的目だってしまうミシン目の穴も、クリーニングを繰り返すなど時間の経過とともに、徐々に目立たなくはなりますが、新調後時間が経ってしまっているものは、ミシン目の穴もしっかりついてしまっているため、調整するなら早期のほうが軽めです。
ミシン目の穴が気になるのは、スラックスのウエスト寸法などを大きく伸ばして縫製されていた部位が、表に出てきてしまった場合。コットンでもストレッチ性のコットンなら、ある程度は軽減されます。