コットンの種類」カテゴリーアーカイブ

カバート織りコットンのジャケット

オーダースーツの店員をしているとたまにお店屋さんの特権のように良い生地を先に入手できるようなときがあり、それは有名無名を問わず、無名なら生地価格も抑えられておりよりうれしいことになります。
カバート織りがされる生地はコットンばかりではなく、スーツやコート用の生地にも多く見かけるものですが、コットンを素材として使いカバート織りで製織されたものは特別にカバート織りと言われています。単純にカバートと言われることもありますし、カバートクロス、カバートコーティングも同意。
カバートとはウィップコード(鞭・縄)のことになるので、コットンカバートは鞭や縄のような比較的はっきりとしたラインが綾織りとして生地表面にあらわれているコットン生地のことになります。このはっきりめについた畝のために、コットンでもシワが目立ちづらく、これは今回の生地色なのですが、濃いめのブルーが少しグレーがかったような、とても深い色をしており、商売よりもまず自分で1着仕立ててみたいと思えるコットン生地で、春夏用のコットン生地ではありますが、若干の毛羽立ち感もオールシーズン的に着たいと考えていたためのコットン生地としては、理想的。数シーズン傾向のある、鮮烈なというか、きれの良いきれいな明るめブルーからは少し外れた色具合なのですが、これはまたこれで良いという好みなコットン生地です。

御幸毛織・マスターシードコットンで仕立てるコットンジャケット

御幸毛織は日本の最高品質のスーツ、ジャケット、パンツ生地を作る生地ブランドとしておじさん世代でも知らない人が多くなってしまったかも知れませんが、おそらく50代、60代の方からすると、御幸毛織で仕立てたオーダースーツなどは手が届かない、いわゆるいつかはクラウン的な憧れ、垂涎のスーツ生地だったのです。
日本製服地は、どうしてもイタリア製、イギリス製という舶来の高品質、ブランド力のある生地メーカーに押されがちなところもあり、オーダー服地としても若干さみしげなところもあるのですが、この御幸毛織だけは頑張っています。
とくにこの春夏シーズンおススメなのが、マスターシードコットンと名付けられたコットン生地で、これは、ジャケット&トラウザーズに収録されているのですが、綿花の女王と言われる「シーアイランドコットン」とその強さに定評のある「ピマコットン」の交配品種のコットン繊維より作られたもので、「シーアイランドコットン」の光沢感、肌触りの良さと、「ピマコットン」の強さを合わせもったスーツ、ジャケット、スラックスのすべてのオーダーアイテムに適したコットン生地となります。
このマスターシードコットンは、御幸毛織の親会社となっている東洋紡とアメリカのニューメキシコ州立大学との共同開発によって生まれた、目付220gととても軽いコットン生地となっています。

ジニョーネのコットンコードレーン

ジニョーネはイタリアの服地ブランドですが、カノニコやロロピアナなど老舗といわれる服地ブランドに比べるとその歴史は比較的浅く、1964年というので50年ほど。
このジニョーネのコットンコードレーン生地に、お気に入り素材を見つけました。コットンにはとても精力的に見えるジニョーネには、裏表ともに使用できるリバーシブルタイプのものなどもあり、コードレーンもそのバンチブックに収録されているもの。
まず目を見張るのが、白地に対してコードレーンを構成するそのカラフルな色の種類の多さで、素材はあえてコットン100%にこだわらず、ナイロンを30%ほど混紡することで、シワになりづらさと生地表面のなめらかな手触りとなっています。
コットンコードの特徴的なところは、コードを埋め込んで作り出される畝状の凹凸感。この畝があるために、夏シーズンには汗ばみがちな手のひらが生地表面に触れたとしても、べたつかずさらっとしたさわり心地が、涼しげ。見た目にも涼しさを感じさせてくれるというものです。
理想的には、このコットンコードレーンを用いたベスト付き3ピーススーツというところですが、夏にはおなじみの色柄とはいえ、はっきりとした色合い・色柄の素材のため、ジャケットのみ、ベストのみ、またはベスト+パンツの組合せで、ファッションの一部に取り入れていただく工夫をされるのがおススメです。。

コットンストレッチはシワになりづらく着心地が良い

カジュアル衣服用の素材ばかりでなく、ビジネスーツにも伸縮性を加えたハイテク素材というものを見るようになってからもう10年以上たつ気がします。衣服用の服地をストレッチ性のある素材で作るメリットは、ジャケットやスラックスに、伸び縮みする機能が加わることで、運動性能が増し、着心地が良くなり、伸縮性があるためにシワになりづらくまた同様の理由から、シワになってしまった際の回復力にも優れているという便利さがあります。
春夏シーズンになると、オーダースーツ店でも急に注目を集め始めるコットンスーツやコットンジャケット、少しぜいたくさはありますが、豊富な色の中から選べるコットンで仕立てるパンツというのも、クールビズというお仕事場環境が定着してきてからは、ご注文をいただく機会も増えてきました。
このコットンは元来、その繊維の硬さから、シワになりやすいとイメージされ、伸縮性はないと考えられている天然素材。このコットンにストレッチ性を持たせるためには、いわゆるポリウレタンやスパンデックスといわれる伸縮性のある繊維を混紡することになります。これら伸縮性繊維そのものの伸縮率はゴムのように500%もあるため、ほんの数%含ませることで、驚きの着心地の良さ。コットン素材の常識が覆ってしまいます。

コットン製品のシワ対策におススメなストレッチコットン

衣服にとってシワの出やすい素材、出にくい素材というのはとても気なるところで、ビジネススーツなどに用いられるウールのオーダー服地などの場合には、サンプルなどを親指と人差し指などでひとつまみし、その後に残るシワ、短時間での回復力などを見たりすることがよくあります。
よくいわれることが、英国服地はシワになりづらいが重く仕立て上がりもかっちりカタメな感じ。イタリア服地は比較的薄地で軽く着心地は良いが、シワにはなりやすい。
特に服地が全般に薄くなる春夏シーズンには、暑さから湿度が高く汗もかくため、スーツ地がよれよれの湿り感があり、シワが目立つ・・。どうせシワになるのなら、春夏スーツは高いものでなくても・・。
コットンやリネンなど天然素材には、もともと伸縮性が少ないため、このシワについては厳しいご意見も多いところなのですが、その夏の着心地の快適さ、風合いから人気も高くまたどうしても頼りたくなってしまう服地のひとつ。。
コットンでもウールでも同じなのですが、シワをできるだけ軽減したい場合、一般的英国服地の特徴とされる目付け(生地の1平方m当たりの重さ)の重い、強い打ち込みのものを選ぶということになるのですが、その他に近年タイトスーツを代表として、クラシコスーツブリティッシュスーツすべてのスーツシルエットのパターンに傾向のあるゆとり量の少ない細身なシルエット。よりシワが出やすいタイト傾向なコットンスーツコットンパンツには、ポリウレタンやスパンデックスを混紡したストレッチコットンというのがおススメ。イタリアブランドではラルスミアーニ、日本製の有名メーカーも良いものがあります。

オーダースーツ Pitty Savile Row

コットンデニムとダンガリー

コットンデニムダンガリーとどのような違いがあるのだろうということで、少し調べてみました。ダンガリーというと世代的なところもあると思うのですが、ブルージーンズに合わせて着るシャツ生地とイメージが強く、中学生のカジュアルアイテムには必須のワードローブで、細巾の編み込みメッシュの縄ベルトのようなものを腰に巻いている人が多かったような気がします。ダンガリーは素材(服地)のことで、ダンガリーズがシャツなどのアイテムを意味するようです。
コットンデニムはというと、もう少し上級で、色はコットンパンツの定番色ベージュ以外にもコットンの染色性の良い所を活かし、黒や赤、オレンジ、水色などカラードコットンを用いて作ってあるジーンズに代わるボトムス。インナーとしての用途は少なく、羽織るジャケットや、やはりコットンデニムパンツが主用途です。
正確には、ダンガリーはデニムを薄地にしたもので、織りはダンガリーもデニムも同じく綾織り(ツイル)ですが、径糸と緯糸に用いる晒し糸と染め糸がそれぞれ逆に使っているところに大きな違いがあります。
ダンガリーはコットンデニムより薄地なものなので、インナーとしてよく着ていたシャツ生地だったというのはうなずけるところ。コットンデニムはコットンで仕立てるパンツ(オーダーパンツ)の素材としても定番は「ベージュ」「白」「黒」「オリーブグリーン」「ネイビー」、更に多くの色種類もあります。
オーダースーツ Pitty Savile Row

コーデュロイもコットン(綿)でできています

子供の頃によくはいたパンツがコーデュロイという方も多いのではないでしょうか。その当時はコール天などといっていたと思います。大人が着るとそれはコーデュロイパンツコーデュロイスーツ、ジャケット。ずいぶん高級感のある響きになります。
その年によって流行があり、ここ数年は3ミリ程度の細畝が好まれているようで、仕上がり感もすっきりで、この細畝巾のコーデュロイをピンウェール・コーデュロイ、太畝巾のものをワイドウェール・コーデュロイと呼びます。一般にコーデュロイはこの畝を特徴とした木綿地(コットン地)ということになりますが、中にはウール・コーデュロイといわれるものなどもあり、畝のあるもの=コーデュロイと考えれられているところもあるようです。
コットンは、通気が良く吸湿性が高いというイメージが強いため、起毛感があり柔らかで暖かな手触りのあるコーデュロイがコットンでできていると知った人は、少し不思議な感じがするようです。もちろん、コットンで作られたコットンジャケットコットンパンツは、夏用アイテムとして愛用される方が多いことは間違いないのですが、そのコットン繊維の中空構造から、空気を多く含み自然のサーモスタット的役割をしてくれる秋冬に暖かいアイテムであるという一面も。特に、産毛のように起毛されたコーデュロイの生地表面はより多くの空気を含み、暖かさを逃がさないという大事な役目を果たしています。

オーダースーツ Pitty Savile Row

カラーコットンとカラードコットン

コットンは染色性の良い繊維で、一般的には、繊維に一種の化学反応を起こさせることによって染着させる反応性染料によって、染められることが多いのですが、近年のエコロジーブームから自然な色合いを楽しむため、天然染料によって染められているコットン生地も多く見られるようになりました。
天然染料による染色は色落ちなどの耐久性は、反応性染料に劣りますが、綿糸にも人にも優しい仕上がり感。
カラーコットンとカラードコットンは、どちらもコットンの色合いについてのことを言っていますが、若干異なり、カラーコットンは、色付きのコットン。黒や濃紺、グレーやベージュなどコットンスーツ、またはジャケパンスタイルで楽しむコットンジャケットコットンパンツなどをカラフルな色つきのコットンでコーディネートするときに使われるコットン生地。
カラードコットンは、既に自然の生成りな色合いがついているコットン。カラーコットンとされるための漂白、染色の工程は行われず、コットン生地についている不純物を取り分ける精錬、生地の風合いを整える仕上げのみ行われコットン生地として製品化されます。
ブラックのタイトなコットンスーツ、生成りに近いベージュのコットンジャケットなど。
スポーティーなカラーコットンには、ポリウレタンスパンデックスなどを混紡したストレッチコットンなども人気。オプションなら色ステッチで入れるピックステッチなどが良さそうです。

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エジプト綿

コットンスーツコットンジャケットコットンパンツなどに用いられるコットンは綿花の中でも上質のもの。コットンボールの中に詰まっている綿毛・綿繊維の長さには長いものから短いものまでありますが、綿繊維の短いものからはウールなどの短繊維と同じく、太く短い糸しか紡績することができず、下級綿として布団用の綿や脱脂綿として用いられます。超長綿といわれるような繊維からは、絹とほぼ同等といわれるほどの高い品質の高級糸を紡績することができ、その手触りのなめらかさ、強さ、光沢感から高級綿といわれるもので、高い吸湿性があります。
ペルーが原産とされるエジプト綿は、シーアイランドコットン(海島綿)と並ぶ高級綿の1つ。エジプトのナイル川流域で生産された綿花から採取される、30~40ミリ(特に長いものは60ミリにもなる)の長い綿毛から紡績された細番手の糸で織られます。その特徴は、細番手の糸で織られるため薄手で、その生地表面のなめらかさでは、シーアイランドコットンに一歩ゆずると言われていますが、その強度においては世界で一番との定評があるコットン素材。
細番手の高級コットン糸から織られる薄手のエジプト綿コットン地は、夏を快適に過ごすためのカジュアルコットン生地としても丈夫で使いやすく、欠かせない素材です。

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シアサッカー

コットンは春夏のみでなく、秋冬にはその繊維の中空構造から保温性をもつオールシーズンに楽しむことができる素材となりますが、盛夏用、特別夏向きにご着用いただくコットン素材にはシアサッカー(単にサッカー)があります。
シアサッカーの生地の特徴である凹凸は「しじら」と言われるもので、昔は、糸の部分的に異なる張力を利用して作られていたものですが、現在は収縮率の違う糸を使用することで、この「しじら」といわれる「縞状のしぼ」を作りだします。
このシアサッカーの凹凸感が、直接に肌と触れる部分を少なくするためサラっとした触感・清涼感を与えてくれ、また同時にコットンなのにシワに強い、ということも夏向き素材として人気が高い大きな理由のひとつです。オーダーで仕立てたコットンスーツコットンジャケットコットンパンツならクリーニングなしという訳にもいきませんが、カジュアル向きなイージーパンツ、シャツなどなら洗濯がいらず洗いざらしでそのまま着ることができます。
初夏の着こなしに欠かせないシアサッカーで仕立てたジャケットやスーツ。この春夏シーズンに仕立てるなら、ジャケットはアンコン仕立てのジャケットがおススメ。裏地は極力少なく、肩パッドの入らないアンコンジャケット、特にナポリ・クラシコ仕様の雨降り袖仕立てのものなら、トレンド、間違いありません。

オーダースーツ Pitty Savile Row