ネクタイの色柄のあらわし方に「ソリッドタイ」などといわれることがある。ソリッドは本来、直訳してしまえば、固形のなどと訳される英語のようで、おそらくこのイメージからかネクタイでソリッドという場合、無地で若干硬めで織られたものをいう。
コットンといえば、ただしくソリッドなイメージの衣服です。生地表面が若干冷たい感じがするのは、繊維が中空構造となっているために、熱の伝導率が悪い、高い吸湿性から肌触りがさらっとしているということがあるのかも知れない。
衣服としてのコットンは、涼しさを保ってくれる、クールでソリッドなアイテム。
反面、コットンには繊維の中空構造に多くの空気を含ませ、暖かさを保つという効果があり、この性質をより生かすために、コットンの生地表面を微細に毛羽立たせ、その毛羽立たせたコットン表面により空気を含ませる。夏に涼しい、夏用衣服といわれるコットンが秋冬用にも用いられるべき、これが暖かさのメカニズムということになるのですが、単純にフラノやサキソニーにも似た、毛羽立ち感は、見た目にも、触った感触としても暖かさを感じさせてくれます。いわゆるオールシーズンコットンといわれるものがこれで、まだ、ウィンターコットンというほどの用いられ方をされることがないコットンスーツやコットンジャケットですが、暖冬傾向や地域によっては、エコな天然素材コットンの優位性を秋冬ファッションの素材として取り入れるべきものなのかも知れません。
コットンジャケットの作り方
コットンは夏用のスーツとしても、ビジネスの現場でご利用者が増えています。なにもお仕事をしている人のすべてが、ウール地のグレーやネイビーのスーツに、ネクタイを締めきっちりと白無地系のドレスシャツを着て、黒の革靴を履きということではありません。クリエイティブなとか、自営業でちょっと気軽な営業、あまりひと目にふれない仕事なので、通勤等にカジュアル素材を選び、その素材は夏はコットン、冬はツイードなどといった具合です。
夏に涼しいコットンジャケットなら、その作り方にも工夫をしたいところ。裏地を半裏仕立てという背抜き+前身の半分程度を削った仕立てにしたり、裏地そのものを極薄の裏地、メッシュ裏地とするなど方法はさまざま。
中でも見た目とその涼しさに効果的なものに、広見返しというものがあるのですが、これは裏地が肩あたりに付くのみで、仕立て方によっては袖裏さえ付けないという方法です。裏地がなくて、見返しを広くとっただけの特殊な仕立て方のため、コットンジャケットとしての仕上がりは軽く、また、通気性・吸湿性に優れたコットンを裏地部分にも用いることで、その天然の涼しい感覚が楽しめます。裏地等を省くので軽く羽織る感覚で着用できるのも広見返しで仕立てる魅力のひとつ。
ビジネス用のコットンジャケットには、オーソドックスなベージュ系やネイビー、ブラックなど落ち着いた色のスーツ、ジャケットが好まれています。伸縮性のあるストレッチコットンもいいです。
黒、ブラックのコットンパンツ
おじさん世代には休日をのんびり過ごすカジュアルには「コットンのスラックス」というスラックスと呼びたいところですが、近頃のタイト系のボトムスには、スラックスよりパンツ。コットンパンツといってしまったほうがしっくりきます。
コットンパンツに限らず、黒のスラックスはちょっとおしゃれなおじさんの普段着から少しよそ行きの上等なズボンとしては定番の色。濃紺スラックスは、もうそのスラックスが1本あればという感じですが、黒のスラックスには若干色気づいた雰囲気が漂います。素材がリネンのパンツの黒というのもいいです。
黒や濃紺、もしくはチャコールグレーのようなパンツは、若い頃から体型変化してしまった腰まわりのだぶつき感を上手に隠して、締まった印象を与えてくれます。また、ジャケパンスタイルやシャツの色柄をあまり気にせず選ぶことができるので、ファッションから遠ざかってしまっているおじさんにも、黒は便利な色柄。
春夏シーズンには、通気性・吸湿性ともに優れ、天然素材の中ではもっとも馴染みがあり、価格も手ごろなコットンパンツで過ごす時間も多いと思います。黒のコットンパンツを含めたコーディネートでは、スーツでもはくコットンパンツをオッドアイテムとしてという使い回しもクールビズ傾向なお仕事現場ではありです。
こんなときには、傷みやすいパンツのみ2本で2パンツスーツという選択も賢いすーつ選びかも知れません。
コットンが夏に涼しく冬暖かい理由
春夏の衣服素材として高いイメージのあるコットンは、その代表的な性質としてシルクや麻などと同じく、高い吸湿性があるため。コットンの綿繊維はとても繊細なものなので、多くの水分を吸い取ることができます。そのため、コットンの内側と外側に温度差・湿度差が生じたとき、この水分を外側に発散させようとする性質が、気化熱を奪い、衣服の中に涼しさをもたらしてくれます。
気化熱の原理は、夏の暑いときに打ち水をすると、その水が蒸発するときに気化熱が奪われ、涼しさを感じられるのと同じしくみになります。
この逆にコットンの冬の暖かさは、コットン繊維の構造が中心部が空洞となる中空構造をしていること、また、コットン繊維にある天然の撚りのために、多くの空気を繊維内に含むことができ、この空気量の多さが熱伝導率を下げ、暖かさを衣服内にとどめ、逃がさない効果を生んでいます。このコットン繊維内の空気量は、コットン生地表面を毛羽立たせることで、より多くの空気を含ませることができ、秋冬、オールシーズン向きなコットン素材となります。
このように春夏のみならず、オールシーズン的にご着用いただくことができるコットン素材。夏に向けてはコットンパンツとして、オールシーズン的にはコットンジャケットを加えたジャケット+パンツの構成で、染色性の高いコットンカラーは、いろいろな楽しみ方ができる天然素材。
カラーコットンとカラードコットン
コットンは染色性の良い繊維で、一般的には、繊維に一種の化学反応を起こさせることによって染着させる反応性染料によって、染められることが多いのですが、近年のエコロジーブームから自然な色合いを楽しむため、天然染料によって染められているコットン生地も多く見られるようになりました。
天然染料による染色は色落ちなどの耐久性は、反応性染料に劣りますが、綿糸にも人にも優しい仕上がり感。
カラーコットンとカラードコットンは、どちらもコットンの色合いについてのことを言っていますが、若干異なり、カラーコットンは、色付きのコットン。黒や濃紺、グレーやベージュなどコットンスーツ、またはジャケパンスタイルで楽しむコットンジャケットやコットンパンツなどをカラフルな色つきのコットンでコーディネートするときに使われるコットン生地。
カラードコットンは、既に自然の生成りな色合いがついているコットン。カラーコットンとされるための漂白、染色の工程は行われず、コットン生地についている不純物を取り分ける精錬、生地の風合いを整える仕上げのみ行われコットン生地として製品化されます。
ブラックのタイトなコットンスーツ、生成りに近いベージュのコットンジャケットなど。
スポーティーなカラーコットンには、ポリウレタンやスパンデックスなどを混紡したストレッチコットンなども人気。オプションなら色ステッチで入れるピックステッチなどが良さそうです。
肌触りが良いコットン
コットンにはインド綿やパキスタン綿など短繊維から紡績されるもの、中繊維となるアメリカ綿、中国綿、オーストラリア綿、高級衣料素材とされる超長繊維、超繊維に属するエジプト綿、シーアイランドコットン(海島綿)、アメリカ産スピーマ綿など繊維長の種類によって、短繊維からデシ綿、アップランド綿、バルバデンセなどに分類されるのであるが、総じてコットン繊維の先端は丸みがあるという特徴があることから、その肌触りが良く柔らかい。
綿花は現在、世界のおよそ90カ国で生産されており、その肌触りの良さから現在の日本における衣服用繊維の約40%を占めています。日本では、平安初期頃中国から送られてきたものが初めと言われています。
特に高級綿の代名詞とされるシーアイランドコットンや、エジプト綿などの風合いはシルクのような光沢とやさしい手触り。世界の綿の90%が中繊維とされるアップランド綿となるため、シーアイランドコットンのような超長綿は希少性が高く価格も高額です。これに対し短繊維となるデシ綿からは、ふとん綿や脱脂綿などが作られます。
オーダースーツで用いられるコットンは、どれもが選別された良い繊維を紡績、織元で織られた品質の良いコットン生地。ビジネスもカジュアルの要素を取り入れて仕事をしやすく。コットンジャケットとコットンパンツ、色違いコーディネートなどで着こなすジャケパンスタイルは、春先から秋口にかけて人気のアイテムです。
パンツオーダーもコットンで
本来カジュアルっぽさの強いコットンですが、懐かしいカジュアルフライデーからはお仕事の現場にも少しずつ登場。スーツ屋さんに言わせればカジュアルフライデーは、ジャケットやスラックスの需要が増え、お客さんからは余計に金がかかる・・など苦情を言われたものでした。
コットンパンツは春夏にも秋冬用のジャケットにも合わせやすく、比較的購入費用も抑えられるため人気。色違いで数本揃えるのがおススメです。定番のベージュは欠かせないとして、ビジネスで使うなら黒のコットンパンツというのは応用範囲が広く、ジャケットの色柄も考えなくていいので1本用意しておくと便利です。
コットンは伸縮性が少なくシワになりやすいので・・と、コットンパンツを含めコットンジャケットなど仕立てる際にも敬遠されることがありましたが、スーツというアイテム自体、ドレスダウンした着こなし方も増えてきましたので、コットンのシワぐらい・・という印象も強いです。また、同じコットンでも伸縮性のあるポリウレタンやスパンデックスなどを混紡することで、コットンなのに動きやすい素材、ストレッチコットンというものもあり、ジャケットでもそうですが、特に下半身のボトムス、コットンパンツにこのストレッチコットンはおススメです。
オーダーで仕立てるスラックスでさえ、作ったことがないのに、カジュアル素材コットンで・・という考え方もありますが、クールビズなどもあり、履き心地の良いコットンパンツの需要はかなり高まっているといえます。
コットンスーツとジャケパン
クールビズや東日本大震災以降の節電ビズ、超クールビズなどというできるだけ電気を使わず、原子力発電に頼らないためにお仕事場で着る衣服を夏にはできるだけ涼しく過ごすための工夫がされています。
コットンスーツといえば上下を同じコットンの生地で作られたスーツのこと。ジャケパンはジャケット+パンツの略で、一昔前でいうならジャケット+スラックスでジャケスラというもの。おじいさんなら替えジャケットと替えスラックスといったほうがピンとくるかも知れません。
春夏を快適に過ごすためには、吸湿性に優れ、肌着などを含め人が用いるアパレル素材の60%を占めるといわれるコットンは欠かせません。最もポピュラーで若い人から年配の人までなじみが深い天然素材がコットン。もともとがカジュアル素材としての知名度、用いられ方の多いコットンですが、前述のお仕事場をできるだけ涼しく、快適に過ごす、クーラーなしで頑張るお仕事にコットンスーツは欠かせません。いろいろな解釈のされ方がされているクールビズですが、スーツの形をしたテーラードなら、雑な言い方をすれば、ずいぶん礼儀正しいクールビズに。ダーク系のブラックや、ネイビー、グレーなどビジネス用のコットンスーツとするのには最適です。
カジュアル色が若干強いジャケパンなら、もう少し明るめなレッド、オレンジ、ライトブルーなども選べるので色違いの上下セパレートスーツが楽しめます。
ダーク系の色柄で選んだコットンスーツでも、ブラックのコットンスーツ、グレーのコットンスーツの2着があれば、着回しで大人っぽいジャケパンスタイルをコーディネートできそうです。
エジプト綿
コットンスーツやコットンジャケット、コットンパンツなどに用いられるコットンは綿花の中でも上質のもの。コットンボールの中に詰まっている綿毛・綿繊維の長さには長いものから短いものまでありますが、綿繊維の短いものからはウールなどの短繊維と同じく、太く短い糸しか紡績することができず、下級綿として布団用の綿や脱脂綿として用いられます。超長綿といわれるような繊維からは、絹とほぼ同等といわれるほどの高い品質の高級糸を紡績することができ、その手触りのなめらかさ、強さ、光沢感から高級綿といわれるもので、高い吸湿性があります。
ペルーが原産とされるエジプト綿は、シーアイランドコットン(海島綿)と並ぶ高級綿の1つ。エジプトのナイル川流域で生産された綿花から採取される、30~40ミリ(特に長いものは60ミリにもなる)の長い綿毛から紡績された細番手の糸で織られます。その特徴は、細番手の糸で織られるため薄手で、その生地表面のなめらかさでは、シーアイランドコットンに一歩ゆずると言われていますが、その強度においては世界で一番との定評があるコットン素材。
細番手の高級コットン糸から織られる薄手のエジプト綿コットン地は、夏を快適に過ごすためのカジュアルコットン生地としても丈夫で使いやすく、欠かせない素材です。
シアサッカー
コットンは春夏のみでなく、秋冬にはその繊維の中空構造から保温性をもつオールシーズンに楽しむことができる素材となりますが、盛夏用、特別夏向きにご着用いただくコットン素材にはシアサッカー(単にサッカー)があります。
シアサッカーの生地の特徴である凹凸は「しじら」と言われるもので、昔は、糸の部分的に異なる張力を利用して作られていたものですが、現在は収縮率の違う糸を使用することで、この「しじら」といわれる「縞状のしぼ」を作りだします。
このシアサッカーの凹凸感が、直接に肌と触れる部分を少なくするためサラっとした触感・清涼感を与えてくれ、また同時にコットンなのにシワに強い、ということも夏向き素材として人気が高い大きな理由のひとつです。オーダーで仕立てたコットンスーツ、コットンジャケット、コットンパンツならクリーニングなしという訳にもいきませんが、カジュアル向きなイージーパンツ、シャツなどなら洗濯がいらず洗いざらしでそのまま着ることができます。
初夏の着こなしに欠かせないシアサッカーで仕立てたジャケットやスーツ。この春夏シーズンに仕立てるなら、ジャケットはアンコン仕立てのジャケットがおススメ。裏地は極力少なく、肩パッドの入らないアンコンジャケット、特にナポリ・クラシコ仕様の雨降り袖仕立てのものなら、トレンド、間違いありません。