ハリスツイードは太古の昔から、スコットランドのアウター・ヘブリディーズの住民たちに織られていた、土地に根ざした民族の衣服、普段着でした。
この美しくて複雑な織り柄をした織物は、長い間優れた、贅沢な織物として知られていましたが、19世紀の中ごろまで、この
ハリスツイードは、地元住民が自分用に織って着用したり、地元市場でのみ流通されるのみに止まっていました。
このハリスツイードを産業として確立し、市場に広めることに尽力したのは、この島の領主ダンモア伯爵の未亡人、ダンモア夫人であったと言われています。
ダンモア夫人は、タータン柄をハリスツイード職工に複製させ、一族、友人らと共に、この島特産の布にすぎなかったハリスツイードをイギリス全土の商人が商う認知度の高い生地として育てあげました。
ハリツイードが広く知られるようになると、多くの人々に求められはじめ、1903年~1906年の間には新しい紡績工場の建設など工業化がすすむなか、アウター・ヘブリディーズ島の成功を利用しようとする人たちから、ハリスツイードの信用をそのイミテーションから護るために設立されたのが、ハリスツイード協会です。
1966年には生産は760万ヤードのピークに達し、王族や紳士階級、ハリウッドの映画スター、多くの有名なファッションデザイナーにまで愛されたハリスツイードは、赤じゅうたんやキャットウォークを華やかに飾ります。スコットランドの小さな島から生まれたハリスツイードは20世紀中ごろまでには、時間を超越した古典的な織物としての地位を確立したといっても良いでしょう。