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ニッカボッカをツイードでオーダーする

ニッカボッカというと、19世紀後半から20世紀前半にかけてスポーツ用、とくに上流階級の人たちが着用したゴルフ用のズボンがイメージされます。ニッカボッカのシルエットは全体にゆったりとしており、長さはヒザ下丈程度、裾にはギャザーがとられており、裾口を釦や尾錠などでしっかり固定する形は、当時の衣服としては動きやすく、機能的なデザイン。
このニッカボッカが作られる素材は、やはり暖かで丈夫という服地であることが必須の条件で、漁師の作業服として愛用されていたことから始まるハリスツイードなどのカントリーツイードは、耐久性のある羊毛、加工工程を経て作られるため、最適の素材です。
このニッカボッカは、またツイードジャケットに組み合わせるズボンとして、ちょうどこの10月に日本で行われるツイードランにも必須のアイテム。
目付けが重く、厚地で、粗い織りの生地感、堅めの手触りで仕立てる、ツイードジャケット+ニッカボッカ、ベスト。色合いは素朴、織り柄はオーソドックスなクラシックパターンが多く、ヘリンボーンやガンクラブチェック、シェパードチェック、ホームスパン等というのがその代表的なもの。丈夫な素材のため、長くご着用いただくことができるというのも、このツイード服地の良いところです。。
ハリスツイードで仕立てるニッカボッカはオーダースーツ Pitty Savile Rowで、オーダーが可です。

カントリーツイードで仕立てる破れないスラックス

ツイードジャケットに合わせるスラックスの定番は、おしゃれな人ならキャバルリーツイルやモールスキンをあげる人が多いはず。つぎにはフランネルやコーデュロイで仕立てたスラックスというのも良く合わせるコーディネートです。
ハリスツイードやカントリーツイードの有名ブランドポーター&ハーディングで織られるツイード服地はとにかく耐久性があり丈夫なもので、ハリスツイードなどをはじめとしてこれらツイード服地は、防寒用の労働着、作業着からその便利さ暖かさが高く評価され、多くの人に広まったものなので、その機能的な一面は誰もが認めるところです。
実際のところ、多くのより薄く丈夫で、軽くしかも耐久性もある素材という点のみを重視して、一番適した素材を探すとすれば、ツイード服地よりも適した服地はあると思うのですが、やはりハリスツイードをはじめ、アイリッシュツイードなど、野趣あるざっくりした風合い、クラシックな感覚を贅沢に味わえるというのが、ツイード生地の良いところなのでは・・と思います。
破れないスラックスといっても、普通のウール生地でもまず破れた経験がないのですが、強いチェビオット種の羊毛を使用し、ウールに丈夫さ堅さを加える工程を経て製織されたツイード服地で仕立てられたスラックスは、風合い、ファッション性、機能性すべてを満足させてくれる、秋冬シーズン最強のオーダースラックス。
国産高級服地から選ぶとするなら、御幸毛織のジャケット&トラウザーズがおススメです!!

要尺が悩ましいツイードジャケットにおなじみのパッチポケット

ハリスツイードなどのツイードジャケットでなくとも、カジュアルらしい雰囲気を出したいジャケットのポケットには、ビジネススーツっぽい胸ポケットハコ、腰ポケットフタ付きポケットに対して、圧倒的に人気があるのがこのパッチポケット。いわゆる貼り付けられたポケットという意味でパッチポケットと言われるのですが、切り込みを入れ中側に袋布が付けられる一般のフタ付きポケットに対して、外側に貼り付けられるという意味で、アウトポケットともいわれるもの。
本来のお仕事用として使われていた作業用、労働用アイテムとしては、道具入れなどの目的からフタがついて釦止めだったり、アコーディオンポケットのように脇・下にマチが付いており、前面にはプリーツを入れたりしてより多くのものを便利に入れることができるようになっているタイプもあるのだと思いますが、現在着用されるカントリーツイードのジャケットはなーんちゃってのため、ポケットに物を入れることはまずなく、多くのファッション誌やファッションサイトでも、アウトポケットに物を入れることはシルエットが崩れてしまうことになるため、おススメできないとしています。
オーダースーツショップ的には、このアウトポケット。とても生地の要尺が必要になるので悩ましいところなのです。あのポケットの形を見ていただくとご理解いただけると思うのですが、なかなかの大きさです。切りポケットだと、フタ程度のところが・・というところですね。。また、ハリスツイードをはじめ、カントリーツイードのジャケット用生地価格は、なかなか高価なもの。頭が痛いところです。

衿タブ、エルボーパッチ、ガンパッチをエクセーヌで

ツイードに限らずですが、コットンやコーデュロイ、フランネルなどのカジュアル素材で仕立てるジャケットには、衿タブ、エルボーパッチ、ガンパッチと言われる装飾性の高いデザインを選ぶのがおススメです。
これらのデザインに用いられる素材は、共生地といって、ジャケットを仕立てる生地と同じものを用いることも多いのですが、中にはエクセーヌというスエード調の人工皮革で作るとジャケットの上質感は増し、縫製上の扱いもしやすく、また色柄も豊富なため人気のオプション素材となっています。
エクセーヌ(Ecsaine)は、東レが開発・製造している人造皮革で、フェイクとはいうもののその独特の風合いから、天然素材では出せない便利な点も多く持つため、エクセーヌで仕立てたジャケットや、衿タブ等のように部分的につけられるオプションとして、オーダースーツでも多くのシーンで登場する服地となっています。
ジャケットの上衿に取り付けられる衿タブには、切替で取り付けられたり、上衿と一体となったもの、またその衿タブの形状も丸や角などいくつかの種類が。エルボーパッチは、ヒジ当てのこと、ガンパッチはツイードジャケットが狩猟用等に用いられたことから、銃を構える際に使われる肩から胸にかけての当て布。ガンフラップとも言われるものです。
これらの当て布に使われるエクセーヌ等の生地色は、ジャケットの生地色によって好きなものを選びます。

ツイードジャケットの裏仕立て

秋冬シーズンが待ち遠しく、ようやくツイードジャケットを仕立てる気分になれるほどな朝晩の涼しさがやってきました。ツイードの服地は、ハリスツイードをはじめざっくりとした織り感があり、重めで、カシミアやSuper表示される繊細でなめらかな肌触りの生地とは反対に、ジャケット内でも摩擦が大きいためと、カタメな生地の着用感から裏地は総裏仕立てにすることが多いジャケット服地。
もともとが防寒目的の作業用、アウトドアの過酷な環境にも負けないほどな丈夫な素材がウリのツイード生地なので、暖かさ重視で総裏仕立ては当たり前とお考えの方もいらっしゃるかもしれないのですが、オールシーズン向きと言われる背抜き仕立てとして、ベストやその他インナーで調整するというのも、いまどきなコーディネート方法です。
また、ツイードジャケットの裏仕立てにも、オーダージャケットならではの装飾的デザインや機能的デザイン、たとえばジャケットの見返しと裏地の境に指定色の裏地でパイピング処理を施したり、ペンポケットやタバコポケット、サイズを調整した携帯電話やスマートフォン用ポケット、裏地そのものをキュプラ裏地とする色指定などというのも、オーダーならではのカスタマイズデザインです。
ヘリンボーングレーのハリスツイードジャケットの裏地を赤、見返しとの境に挟み込むパイピングを黒なんて、ちょっとかっこ良すぎる気もします^^

ツイードスーツを山歩きなどアウトドアスポーツ用に

昔はいまのように丈夫なハイテク素材といわれるような便利なものがなかったので、すべて基本は天然素材。ウールやコットン、シルク、リネンなどの混紡の割合を変えたり、厚み、織り方を変えたりなどのほか、縮絨といわれる生地の組織を密にしたり、地厚にする、目付けを増やす目的に行われる加工を施し、自分が理想とする服地を作り上げるしか方法がありません。
ハリスツイードやドネガルツイードをはじめ、ツイードの多くが本来作業用、防寒目的で作られた、アウトドア向きな服地なため、その生地表面は硬く、その硬さを得るために必須のツイード川の軟水が豊富に得られる、ツイード川流域で、多くのツイード服地の産地が起こったともいえます。
カントリーツイードのなかでも、ひときわその丈夫さに定評があり、ハードな山歩きの際にも植物のとげさえ寄せつけない打ち込みの強さで守ってくれる、「ソーンプルーフ」は、カントリーマンには必須のアイテム。「ソーンプルーフ」はポーター&ハーディングという1947年にカントリースポーツ好きなジョン・ポーターとビル・ハーディングの2人によって創業されたカントリーツイードを得意とする英国のマーチャント。
本来の重めな目付けのソーンプルーフのほか、街着に適した軽めのラインもあります。

ドニゴールツイード、英国製エイブラハム・ムーン

毛織物の製織でも歴史のある英国のなかでも、常に名門の老舗として名を上げられるエイブラハム・ムーン(Abraham Moon&Sons)が創業したのは1837年と古く、ウール製品を中心に製造をしています。
この秋冬シーズンには、Pitty Savile Rowでも、このエイブラハム・ムーン社のツイード生地を厳選5柄新入荷させていただいております。ハリスツイードやマギー社のドネガルツイードに比べると、1平方メートルあたりの重さを基準とする目付けが400~480g程度なのに対して、350g~375gと軽く、優しい織り上がりとなっているので、より街着としてのツイードジャケットとして、また、小柄な女性向きや、ツイードジャケットのざっくりした野趣ある仕上がり感にやわらかさが欲しいオーダージャケットにおススメ。ヘリンボーンの巾も1.1cm程度と細めなため、ツイードの仕上がり感をプラスしたレディースジャケットには好相性と付け加えさせていただきます。。
ツイードといえば、ハリスツイードがまず一番の代名詞。つぎに来るのはやはりドネガルツイード(ドニゴールツイード)でしょうか。このドネガルツイードの語源ともなったドネガル川は川の水が軟水であることから、ツイード製織後の仕上げに使われる際、硬めの生地とするのにとても適していることから。

パッチポケットをツイードジャケットに付ける

ビジネススーツや、すこしかっちりめのジャケットに一般的に付けられるポケットがフタ付きの切りポケット(ポケット口に切り込みがあり、袋布が取り付けられているもの)とするなら、カジュアル色の強い、ハリスツイードやカシミア混、フラノやメルトンのジャケットには、ジャケットの表生地に貼り付けられるデザインとなるパッチポケットは、よく馴染みます。
このパッチポケットの形は、とても種類が豊富で、単純にジャケットと共生地を外側に貼り付けたものや、パッチポケットの形を真四角としたり、台形のほか、このアウトポケットは物入れのために、つけられているのではなく、主に飾りである意味合いが強いのですが、外付けの袋部分に、プリーツを内側の箱ヒダとなるように付けたり、逆の外ヒダで付けるなど、凝ったものも多く見かけます。
このアウトポケットに対して、フタを付けたり、そのフタをボタン止めとするというデザインもよりカジュアル度の高いジャケットとしては定番のデザインです。こういったデコラティブなデザインは、春夏ものの薄手なものでするよりも、ハリスツイードやドネガルツイードなどのがっしりとした目付けの厚地のもので装飾すると、フタも厚地で主張があり、ポケットそのものの存在感もよりアップ。せっかくの、アウトポケットデザインをより効果的に楽しめます。

ホーランド&シェリーのツイード

ホーランド&シェリー(HOLLAND & SHERRY)は170年以上にわたり、最高品質のオーダー服地を提供してくれる英国の老舗マーチャント。その扱い生地はとても幅広く、夏にはリネン100%の生地となるSouth Pacific Pure Linenが、とても人気。
また、これからの秋冬シーズンには、ハリスツイードを独自にセレクトして収集した、ハリスツイードカタログをはじめ、ざっくした織り感と野趣ある風合いのツイード生地も数多いラインナップがありますが、なかでも明るめな色柄が多いシェリーツイードは、目を引かれるものが多く、目付けも310~350g程度と、ハリスツイードやドネガルツイードよりも軽めなため、明るく軽快な色合い、都会的センスの色柄等から、ハリスツイード等のツイード生地とは、また着用シーズンを変えた楽しみ方をできるのではと思います。。
オレンジやダークレッド、定番のネイビーやグレーはもちろんですが、ライトブルーなど、1トーン明るめなミックス織り。深い色表現を可能としています。ホームスパンに見られる色ネップも鮮やかな色が多く、かといってヘリンボーンやガンクラブチェック等定番中の定番のクラシックパターンも好みを探すことができる、64柄のシェリーツイードは、秋冬シーズン見逃せない、一押し、関心度の高いツイード服地。

ハリスツイードなど輸入生地価格と消費増税

今年、平成26年4月よりの消費増税に加え、ハリスツイードなど輸入生地価格が、若干の値上がり。商社のユーロ外貨建て取引の影響らしいのですが、あまり難しいことはわかりません。秋冬シーズンに人気のこのハリスツイードやドネガルツイードの生地価格にもその影響は明らかに出ており、少々の生地価格なら同じお仕立て上り価格で・・という、自分の懐具合はまったく無視し、向こう見ずな太っ腹の姿勢を常に見せるオーダースーツ店・店主ですが、今回ばかりは・・。
とにかく消費税の5→8%、この差額3%というのが悩ましいですね。8月中旬の今頃というと、夏の終わりから秋口にかけてご着用になる春夏スーツ、なかでも若干生地目付けが重め、目詰まりの良いオールシーズン向けな生地となるのですが、ハリスツイードは生地の知名度もあり、人気も高い服地なので、どうせ仕立てるなら、長いシーズンを着たいのはどなたも考えることらしく、早めにご案内しておけば・・というところです。。
今年の生地柄の中で目立つのは、タータンチェックと言われる、イギリス伝統の織り柄の中でも、明るめな発色の良いもの。あまり素人向けではなさそうですが、ベストなんかにするといいのかも・・と思ってしまう生地ですね。
あとは、もうこれははずせない定番中の定番な、ヘリンボーンやガンクラブチェック。手始めにまず1着持つなら、このオーソドックスな色柄がおススメ。