「ハリスツイード」カテゴリーアーカイブ

ハリスツイードジャケットで上衿や袖を別生地で仕立てる

ツイードに限らずジャケットをオーダーする際には、通常オーダースーツ店に飾られている生地棚から自分のイメージに合う好みのジャケット生地1種類を選び、店主とシルエット・デザインを相談し、ジャケットをオーダーすることになります。
表題のハリスツイードジャケットの一部を別生地で仕立てることは、例えばヒジ部分につけるエルボーパッチや、共生地でもつけることが多いですが、別生地を指定することも出来る衿タブ、貼り付けられている作り方のため、比較的取り替えることが容易な、アウトポケットとした場合の、胸ポケットや腰ポケット。若干マニアックなディテールでいえば、背部分につけられる背バンドや、胸当てとしてのガンパッチなど。全体を仕立てるジャケット生地を用いても、アウトポケットとして貼り付ける方向をバイアスとしたり、タテ方向を横方向など、ストライプ柄でやると効果的です。
また、この別生地を用いてハリスツイードジャケットなどを仕立てる方法として、切り替えて作られている上衿や、身頃とは切り離されて裁断される袖部分、昔懐かしいマジンガーZの阿修羅男爵のように、半身を別生地で仕立てるなど。生地要尺という点では、ずいぶんロスとなってしまう部分の生地が必要となってしまいますが、個性的なカジュアルジャケット作りはとても楽しいです。いまちょうど流れているスマホのCM、デートにいく男性がスマホからのショッピングで選ぶ、少し無理して選んだジャケットがちょうどこんな感じです。

英国調のシルエットで仕立てるハリスツイードジャケット

12月も近くなってくると、寒さがずいぶん増してきました。この時期になるとよくいただくお問い合わせにハリスツイードのような英国生地でジャケットを仕立てる際には、英国調、ブリティッシュの特徴を備えたジャケットでないとおかしいのか・・というもの。
この考え方でいくと、ダンヒルやドーメルなど英国服地は必ずブリティッシュ調、ゼニアやロロピアナなどのイタリア服地はイタリアのテイストを色濃くもつクラシコ調でスーツ、ジャケットを仕立てなければならないということになります。
ハリスツイードは厳密にはアイルランド産。ドネガルツイードなどと同じアイリッシュツイードの仲間ですが、ハリスツイードのみは絶対的な固有名詞として揺ぎない地位を確立している感があります。
ブリティッシュスーツの特徴として上げられるところは、やはり男性的なバストライン、そして高めのウエスト位置から流れるようにフレアしたドレッシーな裾ラインというところでしょうか。高いウエスト位置から、サイドポケットの上にチケット入れもしくは小銭入れ用を目的として付けられていた、いまはその名残ですが、チェンジポケットというものも、カジュアルテイストの強いハリスツイードジャケットにはアクセントとなり相性が良さそう。しかし、ハリスツイードはアメトラもクラシコも、その他もろもろの有名セレクトショップでさえ、自社ラインで商品構成をするほどな有名生地なので、シルエットももちろんですが、生地の良さにその楽しむべきところがあると思います。

一生着たい、ハリスツイードジャケットの裏地張替え

どこかのセレクトショップの店員さんが、ハリスツイードで仕立てたものは一生着られると言っていた。実際、生地にごわごわ感があるほど、ハリスツイードジャケットの生地表は堅めです。いわゆる、外毛といわれるもので、皮膚近くに生える内毛(産毛)と違い、かたく張りのある羊毛で織られています。
耐久性もあり頑丈というのは、ハリスツイードが本来仕事着で、極寒の船上での作業にハリス島、ルイス島の漁師さんが着ていたもの。愛用年数が重なれば、裏地のほうが消耗してしまい、薄くなって透けて見えるほどになってしまったり、擦り切れたりなど。そこまでいかなくとも、汗じみや、汚れで裏地張替えでもして、気分転換したくなるのも人情というものです。
ジャケットの裏地を張り替えるという作業は、簡単ではなく、ほどいてからまた縫い上げる作業は、逆に1着のジャケットを普通に縫うよりも大変な縫製作業。慣れた直し屋さんでも、一日がかりでも大変な仕事量で、腕に自信がない直し屋さんでは仕事そのものを受けてくれません。ジャケットの裏仕立て、総裏仕立てや背抜き仕立てなどでも、縫製作業量が異なり、裏地持ち込みで¥13000~¥14000ほどで、きれいに張替え完了です。裏地は普通のポリエステル裏地で、着分2000~3000程度というところでしょうか。キュプラほか、柄裏地などとなると、また値段が変わってきます。

ハリスツイードでスラックスを仕立てる

室内の店から出ると、外は急に寒い。やはり日本には四季があるねと、こんなときには実感する。近所の高級中華の店からは、すばらしい身なりをしたご夫人と子供連れが、中華でいいの・・?というほど着飾っている姿を見ることができる。
ここは比較的繁華街なため、佐川急便も台車を引いて荷物を配達しているが、なかなかおしゃれなパンツのはきかたをしており、つまりずり下げてはく、腰パンというやつだろうか。さすがイケメン王国佐川急便は、作業用紺パンツの履き方にも工夫があって関心させられてしまう・・。どちらかといえば、個人的には、佐川女子にこの腰パンをやっていただきたい気持ちに駆られるが、これはそっとおじさんの心の奥底にしまっておこう。
ハリスツイードは、目付けが軽めのもので400g、重めのものでは480g程度あるため、一般にはアウター用の服地ですが、本格的な冬シーズンを迎えるにあたって、ハリスツイードジャケット以外、スーツとして、もしくは、オッドパンツとしての用途もいい。ただ、このハリスツイードで仕立てるパンツは、重めなだけに存在感が半端でないため、ボトムス中心の着こなしを考えないと、もこもこするだけで、おしゃれでなくなってしまう。ハリスツイードのオッドパンツに合わせる上着は、薄手で防寒性にすぐれた素材を選ぶのが正解。本革や人工皮革、ぺらぺら~なビニールだって近頃は高級感があって、十分に暖かい。なにを中心に置くかで、またいつもとは違ったコーディネートを楽しめるというものだ。

ハリスツイードに定番なヘリンボーン

ハリスツイードには無地やチェック柄など、素朴な風合いを生かす、あまり複雑でないどちらかといえば古典柄といえる織り柄を多く見ます。特に、その中でも好相性。ハリスツイードジャケットに限ったことではありませんが、秋冬ならドネガルツイード、春夏のコットンにも、無地に加えてなにか・・というとき、必ず目にするのがこのヘリンボーン
このヘリンボーンは日本名でいうところの「杉綾」で、その織り目が杉の葉のように見えるところから。ヘリンボーンはそのまま「ニシンの骨」と訳せます。
最もオーソドックスなハリスツイード、まず思い浮かぶのがチャコールグレーのハリスツイードジャケット。ワントーン、グレーを明るめにしたライトグレーや、茶+黒や、ブルー+黒の2色で構成されたヘリンボーンのハリスツイードジャケットというのも例年見る色柄かも知れません。
とにかく長持ちするハリスツイードは、コート代わりのアウターとしても最適なので、個人的な1着はやはり色が濃い目のチャコールグレーのジャケットですね。
目付けといわれる1平方メートル当たりの重さであらわすと、ハリスツイードはやはり重めで400gと480gの2種類。グレーのヘリンボーン柄はどちらの目付けでも用意がされているので、コート用、ジャケット用、あとは個人のお好みで軽めに着たい、防寒着としてなら、裏仕立ても合わせてオーダー時に考えてみたいところです。

ハリスツイードのロングジャケット

装いの良い大人の紳士が冬の寒い時期、フォーマルスーツの上に着用している外套といえばその素材はカシミヤで、色は黒かグレーといったところでしょうか。
これに比べて素材がハリスツイードとなると、カシミヤと同じ程度の暖かさをもつ高級服地という点では同じですが、ぐっとカジュアル感が増してしまいます。それは、やはり極寒の船の上で、作業に従事する漁師さんを暖かく保つためという、ワークウエア的な起源のためかも知れません。
ざっくり織られた厚地なハリスツイード生地の中に取り込まれる空気が、衣服の中を暖かに保ってくれるので、コートほどの長い着丈でなくとも、通常ジャケット着丈でもハリスツイードジャケットなら暖冬傾向な近年の秋冬には十分すぎるほど。
コート丈の基準を着丈100cmとするなら、一般にロングジャケットされる着丈は、ご愛用ジャケットの着丈+15cm程度がバランスの良いものです。カスタムテーラーとしては、ハリスツイードのような値のはる生地を、長めな着丈でいただくご注文は、厳しいところだと思うのですが、多くのテーラーで85cm程度までは、通常ジャケット工賃で仕立てるところが多いので、ドライビングコート、半コート的な感覚で着用するロングジャケットというのが狙い目かも知れません。

オーダースーツ Pitty Savile Row

世界に輸出されるハリスツイード

ハリスツイードは、スコットランドの端、アウターヘブリディーズの小さな島から世界各国およそ50カ国に輸出されています。アウターヘブリディーズの織物工場で働いている職人は250人以上を数え、古くから取引のあるヨーロッパや北アメリカ、極東の市場のほか、近年ではロシア、ブラジル、インドや中国など力強く新興発展する諸外国も名前を連ねます。世界各国で国際的に認められた登録商標は30カ国以上。
ハリスツイードの用いられ方は、メンズのジャケットをはじめ、オーダージャケット、前衛的なデザインによって仕立てられたファッションスタイルなど。
特にオーダースーツで仕立てられることが多いデザインは、やはりハリスツイードジャケット。エコなウォームビズを希望するファッションスタイルからは、上下スーツやベスト付きのスリーピーススーツも。デザインでは、背バンドや人工皮革エクセーヌを付けたエルボーパッチガンパッチなど、衿タブも人気のようです。
実用的な普段着、自分が着用するために織られていた程度のハリスツイードは、その品質管理の徹底から独自のブランドを築き、今でもツイードと呼ばれる生地の中でも最高位といえる地位を守り続けています。

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ハリスツイードの歴史

ハリスツイードは太古の昔から、スコットランドのアウター・ヘブリディーズの住民たちに織られていた、土地に根ざした民族の衣服、普段着でした。
この美しくて複雑な織り柄をした織物は、長い間優れた、贅沢な織物として知られていましたが、19世紀の中ごろまで、この
ハリスツイードは、地元住民が自分用に織って着用したり、地元市場でのみ流通されるのみに止まっていました。
このハリスツイードを産業として確立し、市場に広めることに尽力したのは、この島の領主ダンモア伯爵の未亡人、ダンモア夫人であったと言われています。
ダンモア夫人は、タータン柄をハリスツイード職工に複製させ、一族、友人らと共に、この島特産の布にすぎなかったハリスツイードをイギリス全土の商人が商う認知度の高い生地として育てあげました。
ハリツイードが広く知られるようになると、多くの人々に求められはじめ、1903年~1906年の間には新しい紡績工場の建設など工業化がすすむなか、アウター・ヘブリディーズ島の成功を利用しようとする人たちから、ハリスツイードの信用をそのイミテーションから護るために設立されたのが、ハリスツイード協会です。
1966年には生産は760万ヤードのピークに達し、王族や紳士階級、ハリウッドの映画スター、多くの有名なファッションデザイナーにまで愛されたハリスツイードは、赤じゅうたんやキャットウォークを華やかに飾ります。スコットランドの小さな島から生まれたハリスツイードは20世紀中ごろまでには、時間を超越した古典的な織物としての地位を確立したといっても良いでしょう。

ハリスツイード・ジャケット
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ハリスツイード認定・生地タグ


ハリスツイードの品質が最高品質のツイード生地であることは、1993年に議員法で可決されたハリスツイード法にしっかりと定義されているもの。ここに定義されるハリスツイードとされる生地は、「アウターヘブリディーズで手紡ぎで紡がれたまじりけのない原毛を使い、かれら島民の家で手織りで織られ、染められ最終製品化されるツイード生地」原毛の産地、作り手、作り方、アウターヘブリディーズで最終的にハリスツイードとして仕上げられていることをとされています。
このアウター・ヘブリディーズは、ハリスツイードの語源ともなった、ハリス島、ルイス島を含むヘブリディーズ諸島を二分する地域的グループのこと。スコットランドの西側に位置する大小さまざまな島からなるヘブリティーズ諸島は、このアウター・ヘブリディーズとインナー・ヘブリディーズとに分けられます。
この厳しい法律の監督のもと、管理されたハリスツイード協会によって認定されたハリスツイード生地にはその認定の証ともいえる生地マーク(商標)が与えられ、間違いないハリスツイードのシンボルとして保証されます。
生地マーク、ブランドマークはどのメーカーによっても正しく品質の証明であることは間違いのないところだと思うのですが、このハリスツイードにおいては、1ブランドの品質基準が法律によって定義されているというところが、人気の高さを感じます。
工業的に多く出回るイミテーションから地元産業を大切に守っていこうという趣旨のあらわれでしょうか。

ハリスツイード協会は2010年に設立100周年を迎え、通常白の認定生地マークもこの年のみは、黒。ブラックラペルという感じです。

ハリスツイードジャケット
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ハリスツイード

ハリスツイードをはじめとするツイード素材、ドネガル(ドニゴール)ツイードなども広くは英国産といわれることも多いのですが、厳密にはアイルランド産。ツイードに分類される厚地の紡毛織物のなかでもハリスツイードは最も知られているツイードです。

スコットランドの北西部に位置するアウター・ヘブリディズ諸島のなかの「ハリス島」「ルイス島」で主に織られていたため、「ハリスツイード」と呼ばれるようになりました。地元の生活環境に根ざしたハリスツイードは、漁師さんが風の強い船の甲板上や、岸壁などで作業するための防寒衣として作られ続けてきたものなので、その暖かさは間違いのないもの。粗く太い手紡ぎ・手織りの紡毛糸を、ざっくり織ったものなはずなのに、風も通さず暖かいのは、服地の暖かさがどれだけ繊維内に空気を含むことができるかによるためです。

ハリスツイードが他のツイードに比べて高い人気を持つのは、ハリスツイード協会(The Harris Tweed Authority)による徹底した品質管理にあります。このハリスツイード協会は2011年に発足100年を迎え、通常白地に十字のハリスツイード協会認定タグが、この年のみは金字に黒。生産農家によって家内工業的に生産されるハリスツイードは、この協会によって厳しく管理され、その検査に合格したハリスツイードにのみ、この生地タグが付けられるなかなか存在感もあり、貴重なものです。

ハリスツイードはウォームビズの傾向から、近年以前にも増して人気があり、その素朴な風合いはブリティッシュスーツやクラシコスーツとも相性が良く、ディテールの変化にも柔軟に対応してくれる素材。主には、ハリスツイードジャケットとして着られることが多いですが、パンツにも裏地を付けるパンツ総裏仕立てのハリスツイードパンツ、ハリスツイードベスト付き3ピーススーツ、ハンチング、バッグなどその組み合わせ方も多いです。

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