「ツイード生地」カテゴリーアーカイブ

ツイード感覚を楽しむライトツイード

ツイード発祥の由来を考えると、ライトツイード(おそらく和製英語)はその存在さえ許されるのだろうかと多少の疑問を感じてしまうのですが、スーツもジャケットもできるだけ長いシーズンにわたって着用したいという重衣料の傾向からは、このツイード感覚も楽しめ、秋冬はもちろん春先、秋の入り口にも着れるライトツイードというのは、なかなか便利な服地のようです。
ツイードは英国アイルランドの生活に根ざした織物で、ドネガルツイードはこの地方で飼育された羊毛をドネガル川で洗毛し、近隣の農家が手工業的に手紡ぎ、手織りで織り上げたホームスパン、素朴な風合いの織物。ハリスツイードなども同様、ざっくり感が大きな特徴となるもので、この「ざっくり感」という見た目・風合いのみを持つ織物を、生産地、素材、色柄など関係なくツイードといっているのですが、ライトツイードは、ツイードでありながら、比較的細めの糸を使用し、生地は薄めで、重さも軽いもの。ネップのような節糸も見られるのですが、デザインとして織りこまれたようにセンスが良く、素朴な風合いをもつ紡毛な感じがないため、都会的でアンコン仕立てなど、よりカジュアルなテイストで着用するジャケットの場合には、真冬に心配になるほどな軽さを持つジャケットに仕上がります。ライトツイードは、一般にツイードの風合いと考えられる織り感を、細番手の糸を主に使用し、独特の光沢感・風合いを持たせるために、シルク混としたり、カシミア混としたり、また細糸なために、より複雑な織り柄を出せるなど、現代的に進化したツイード服地。

ツイードをアクセサリーなど小物使いで

ツイードは衣服でも主にジャケットとしてお仕立て、ご利用いただくことが多い服地というのは、だれもが思うところだと思います。実際、ツイードジャケットは秋冬カジュアルの定番。近頃では、クールビズに対してエコに暖かく、お仕事環境を整えるため、ツイードをはじめ、コーデュロイ、厚地コットン、フランネルなどで仕立てたスーツやアイテムで過ごす、ウォームビズというのもよく耳にします。
英国調回帰のスーツ事情と重なり、ハリスツイードやドネガルツイードなど英国、スコットランドと馴染みの深い服地などは、ウエスト位置が高く、着丈長め、フロントカットを大きめにとったブリティッシュスーツの特徴の濃いデザイン、例えばチェンジポケットや、カジュアルシックに衿をタブ付きなども人気です。
自分が住んでいる静岡のすぐ近くで開催されることとなったツイードラン名古屋。参加募集要項をちょっと調べてみたのですが、しっかりと上下ともツイードで仕立てた衣服に身を包み、自転車もツイードな装いに似合うクラシックなものでなければ不可か・・、といえばそうでもなく、ツイード製ならアクセサリー類などでも大丈夫らしいです。例えば、ツイード製の帽子や、財布、バッグなど、募集人員にも定員があるのですが、参加には問題なしです。

ホームスパン

ホームスパンとは、家庭で人の手によって紡がれ、手織りされたツイードのことで、現在多くの人々に愛用されているハリスツイードドネガルツイードなどの原点となるツイードの織り方。織物そのものをいう場合もあります。
家庭で手織りされるツイード・ホームスパンは全てが手作業で織り上げられます。まず、羊から刈り取られた羊毛の原毛は、ゴミなど不純物を取り除かれた後、石鹸でよく毛洗いされ、染色。カード機で毛の繊維を引き揃えるカーディング作業の後、糸車を回転させ行われる糸の手紡ぎ。抒を用い、太さのムラなどを調整しながら手織りされていきます。この繊維の太さにムラのあるところがホームスパンの特徴的なところで、生地表に自然で素朴な風合いとなるネップ(節)を生み出し、色の染め上がりを野趣あるものとしています。
織り上げられたあとは、縮絨をすることで糸の目を詰まらせ、生地を安定させたあと、織り上がり製品として丁寧にアイロンをかけ、巾などを揃えられます。
ホームスパンは、手織りのツイード生地をさすことから、その範囲は広いものとなりますが、その中でもホームスパンの代名詞としてあげられるほど認知度の高いツイードがドネガルツイード。ドニゴール川で手洗いされ、織られるドネガルツイードは、このアイルランドのドニゴール地方の農家で織られるホームスパンです。
アイリッシュツイード、ナップツイードなど、ドネガルツイードと同義。

オーダースーツ Pitty Savile Row

ハリスツイード

ハリスツイードをはじめとするツイード素材、ドネガル(ドニゴール)ツイードなども広くは英国産といわれることも多いのですが、厳密にはアイルランド産。ツイードに分類される厚地の紡毛織物のなかでもハリスツイードは最も知られているツイードです。

スコットランドの北西部に位置するアウター・ヘブリディズ諸島のなかの「ハリス島」「ルイス島」で主に織られていたため、「ハリスツイード」と呼ばれるようになりました。地元の生活環境に根ざしたハリスツイードは、漁師さんが風の強い船の甲板上や、岸壁などで作業するための防寒衣として作られ続けてきたものなので、その暖かさは間違いのないもの。粗く太い手紡ぎ・手織りの紡毛糸を、ざっくり織ったものなはずなのに、風も通さず暖かいのは、服地の暖かさがどれだけ繊維内に空気を含むことができるかによるためです。

ハリスツイードが他のツイードに比べて高い人気を持つのは、ハリスツイード協会(The Harris Tweed Authority)による徹底した品質管理にあります。このハリスツイード協会は2011年に発足100年を迎え、通常白地に十字のハリスツイード協会認定タグが、この年のみは金字に黒。生産農家によって家内工業的に生産されるハリスツイードは、この協会によって厳しく管理され、その検査に合格したハリスツイードにのみ、この生地タグが付けられるなかなか存在感もあり、貴重なものです。

ハリスツイードはウォームビズの傾向から、近年以前にも増して人気があり、その素朴な風合いはブリティッシュスーツやクラシコスーツとも相性が良く、ディテールの変化にも柔軟に対応してくれる素材。主には、ハリスツイードジャケットとして着られることが多いですが、パンツにも裏地を付けるパンツ総裏仕立てのハリスツイードパンツ、ハリスツイードベスト付き3ピーススーツ、ハンチング、バッグなどその組み合わせ方も多いです。

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ツイード

ツイードはスコットランドのツイード河流域を原産地とする厚手の紡毛織物。

ツイード河で羊毛の汚れを洗っていたことからこの名前が付けられたとされています。 手紡ぎの紡毛糸をあらかじめ、いろいろな色に染色しておき、杉綾(ヘリンボーン)千鳥格子(ハウンドトゥース)などの模様で織り上げます。 そのほとんどはツイードが語源とされるツイル(綾織り)で織られ、一部には平織りのものも見られますが、製織後、縮絨起毛させないため、織り目がはっきりとあらわれ、独特の粗くざっくりとした風合いが特徴的。

もともと、ツイードは英国スコットランドの生活・風土に密着した、それぞれの地方独特の織物ですが、現在ではヨークシャーツイードなどをはじめとし、工業生産的に大量生産される、その風合いをツイード風に織り上げたざっくり感のある素朴な厚地織物全般をさして使われることが多いです。

秋冬のカジュアル向きの服地として、ツイードといえばその代名詞とされるハリスツイードドニゴール(ドネガル)ツイード、エジンバラツイード、シェトランドツイード、チェビオットツイードなどその産地とされる地方の名前を付けられた数種類のツイード素材は、オーダースーツ、オーダージャケットの分野でも特に高い人気を持っています。

スポーティーな感覚が持ち味で、2009年からイギリスではじまった「ツイードラン」はツイード製のスーツ、ジャケットなどを着用して自転車で走るイベント。2012年10月20日には、「Tweed Run Tokyo 2012(ツイードラン 東京 2012)」が、東京でも開催され、およそ150人の参加者が秋冬のファッションイベントを楽しみました。

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