昔はいまのように丈夫なハイテク素材といわれるような便利なものがなかったので、すべて基本は天然素材。ウールやコットン、シルク、リネンなどの混紡の割合を変えたり、厚み、織り方を変えたりなどのほか、縮絨といわれる生地の組織を密にしたり、地厚にする、目付けを増やす目的に行われる加工を施し、自分が理想とする服地を作り上げるしか方法がありません。
ハリスツイードやドネガルツイードをはじめ、ツイードの多くが本来作業用、防寒目的で作られた、アウトドア向きな服地なため、その生地表面は硬く、その硬さを得るために必須のツイード川の軟水が豊富に得られる、ツイード川流域で、多くのツイード服地の産地が起こったともいえます。
カントリーツイードのなかでも、ひときわその丈夫さに定評があり、ハードな山歩きの際にも植物のとげさえ寄せつけない打ち込みの強さで守ってくれる、「ソーンプルーフ」は、カントリーマンには必須のアイテム。「ソーンプルーフ」はポーター&ハーディングという1947年にカントリースポーツ好きなジョン・ポーターとビル・ハーディングの2人によって創業されたカントリーツイードを得意とする英国のマーチャント。
本来の重めな目付けのソーンプルーフのほか、街着に適した軽めのラインもあります。
「ツイード生地」カテゴリーアーカイブ
ドニゴールツイード、英国製エイブラハム・ムーン
毛織物の製織でも歴史のある英国のなかでも、常に名門の老舗として名を上げられるエイブラハム・ムーン(Abraham Moon&Sons)が創業したのは1837年と古く、ウール製品を中心に製造をしています。
この秋冬シーズンには、Pitty Savile Rowでも、このエイブラハム・ムーン社のツイード生地を厳選5柄新入荷させていただいております。ハリスツイードやマギー社のドネガルツイードに比べると、1平方メートルあたりの重さを基準とする目付けが400~480g程度なのに対して、350g~375gと軽く、優しい織り上がりとなっているので、より街着としてのツイードジャケットとして、また、小柄な女性向きや、ツイードジャケットのざっくりした野趣ある仕上がり感にやわらかさが欲しいオーダージャケットにおススメ。ヘリンボーンの巾も1.1cm程度と細めなため、ツイードの仕上がり感をプラスしたレディースジャケットには好相性と付け加えさせていただきます。。
ツイードといえば、ハリスツイードがまず一番の代名詞。つぎに来るのはやはりドネガルツイード(ドニゴールツイード)でしょうか。このドネガルツイードの語源ともなったドネガル川は川の水が軟水であることから、ツイード製織後の仕上げに使われる際、硬めの生地とするのにとても適していることから。
ホーランド&シェリーのツイード
ホーランド&シェリー(HOLLAND & SHERRY)は170年以上にわたり、最高品質のオーダー服地を提供してくれる英国の老舗マーチャント。その扱い生地はとても幅広く、夏にはリネン100%の生地となるSouth Pacific Pure Linenが、とても人気。
また、これからの秋冬シーズンには、ハリスツイードを独自にセレクトして収集した、ハリスツイードカタログをはじめ、ざっくした織り感と野趣ある風合いのツイード生地も数多いラインナップがありますが、なかでも明るめな色柄が多いシェリーツイードは、目を引かれるものが多く、目付けも310~350g程度と、ハリスツイードやドネガルツイードよりも軽めなため、明るく軽快な色合い、都会的センスの色柄等から、ハリスツイード等のツイード生地とは、また着用シーズンを変えた楽しみ方をできるのではと思います。。
オレンジやダークレッド、定番のネイビーやグレーはもちろんですが、ライトブルーなど、1トーン明るめなミックス織り。深い色表現を可能としています。ホームスパンに見られる色ネップも鮮やかな色が多く、かといってヘリンボーンやガンクラブチェック等定番中の定番のクラシックパターンも好みを探すことができる、64柄のシェリーツイードは、秋冬シーズン見逃せない、一押し、関心度の高いツイード服地。
ハリスツイードなど輸入生地価格と消費増税
今年、平成26年4月よりの消費増税に加え、ハリスツイードなど輸入生地価格が、若干の値上がり。商社のユーロ外貨建て取引の影響らしいのですが、あまり難しいことはわかりません。秋冬シーズンに人気のこのハリスツイードやドネガルツイードの生地価格にもその影響は明らかに出ており、少々の生地価格なら同じお仕立て上り価格で・・という、自分の懐具合はまったく無視し、向こう見ずな太っ腹の姿勢を常に見せるオーダースーツ店・店主ですが、今回ばかりは・・。
とにかく消費税の5→8%、この差額3%というのが悩ましいですね。8月中旬の今頃というと、夏の終わりから秋口にかけてご着用になる春夏スーツ、なかでも若干生地目付けが重め、目詰まりの良いオールシーズン向けな生地となるのですが、ハリスツイードは生地の知名度もあり、人気も高い服地なので、どうせ仕立てるなら、長いシーズンを着たいのはどなたも考えることらしく、早めにご案内しておけば・・というところです。。
今年の生地柄の中で目立つのは、タータンチェックと言われる、イギリス伝統の織り柄の中でも、明るめな発色の良いもの。あまり素人向けではなさそうですが、ベストなんかにするといいのかも・・と思ってしまう生地ですね。
あとは、もうこれははずせない定番中の定番な、ヘリンボーンやガンクラブチェック。手始めにまず1着持つなら、このオーソドックスな色柄がおススメ。
ツイード感覚を楽しむライトツイード
ツイード発祥の由来を考えると、ライトツイード(おそらく和製英語)はその存在さえ許されるのだろうかと多少の疑問を感じてしまうのですが、スーツもジャケットもできるだけ長いシーズンにわたって着用したいという重衣料の傾向からは、このツイード感覚も楽しめ、秋冬はもちろん春先、秋の入り口にも着れるライトツイードというのは、なかなか便利な服地のようです。
ツイードは英国アイルランドの生活に根ざした織物で、ドネガルツイードはこの地方で飼育された羊毛をドネガル川で洗毛し、近隣の農家が手工業的に手紡ぎ、手織りで織り上げたホームスパン、素朴な風合いの織物。ハリスツイードなども同様、ざっくり感が大きな特徴となるもので、この「ざっくり感」という見た目・風合いのみを持つ織物を、生産地、素材、色柄など関係なくツイードといっているのですが、ライトツイードは、ツイードでありながら、比較的細めの糸を使用し、生地は薄めで、重さも軽いもの。ネップのような節糸も見られるのですが、デザインとして織りこまれたようにセンスが良く、素朴な風合いをもつ紡毛な感じがないため、都会的でアンコン仕立てなど、よりカジュアルなテイストで着用するジャケットの場合には、真冬に心配になるほどな軽さを持つジャケットに仕上がります。ライトツイードは、一般にツイードの風合いと考えられる織り感を、細番手の糸を主に使用し、独特の光沢感・風合いを持たせるために、シルク混としたり、カシミア混としたり、また細糸なために、より複雑な織り柄を出せるなど、現代的に進化したツイード服地。
ツイードをアクセサリーなど小物使いで
ツイードは衣服でも主にジャケットとしてお仕立て、ご利用いただくことが多い服地というのは、だれもが思うところだと思います。実際、ツイードジャケットは秋冬カジュアルの定番。近頃では、クールビズに対してエコに暖かく、お仕事環境を整えるため、ツイードをはじめ、コーデュロイ、厚地コットン、フランネルなどで仕立てたスーツやアイテムで過ごす、ウォームビズというのもよく耳にします。
英国調回帰のスーツ事情と重なり、ハリスツイードやドネガルツイードなど英国、スコットランドと馴染みの深い服地などは、ウエスト位置が高く、着丈長め、フロントカットを大きめにとったブリティッシュスーツの特徴の濃いデザイン、例えばチェンジポケットや、カジュアルシックに衿をタブ付きなども人気です。
自分が住んでいる静岡のすぐ近くで開催されることとなったツイードラン名古屋。参加募集要項をちょっと調べてみたのですが、しっかりと上下ともツイードで仕立てた衣服に身を包み、自転車もツイードな装いに似合うクラシックなものでなければ不可か・・、といえばそうでもなく、ツイード製ならアクセサリー類などでも大丈夫らしいです。例えば、ツイード製の帽子や、財布、バッグなど、募集人員にも定員があるのですが、参加には問題なしです。
ホームスパン
ホームスパンとは、家庭で人の手によって紡がれ、手織りされたツイードのことで、現在多くの人々に愛用されているハリスツイード、ドネガルツイードなどの原点となるツイードの織り方。織物そのものをいう場合もあります。
家庭で手織りされるツイード・ホームスパンは全てが手作業で織り上げられます。まず、羊から刈り取られた羊毛の原毛は、ゴミなど不純物を取り除かれた後、石鹸でよく毛洗いされ、染色。カード機で毛の繊維を引き揃えるカーディング作業の後、糸車を回転させ行われる糸の手紡ぎ。抒を用い、太さのムラなどを調整しながら手織りされていきます。この繊維の太さにムラのあるところがホームスパンの特徴的なところで、生地表に自然で素朴な風合いとなるネップ(節)を生み出し、色の染め上がりを野趣あるものとしています。
織り上げられたあとは、縮絨をすることで糸の目を詰まらせ、生地を安定させたあと、織り上がり製品として丁寧にアイロンをかけ、巾などを揃えられます。
ホームスパンは、手織りのツイード生地をさすことから、その範囲は広いものとなりますが、その中でもホームスパンの代名詞としてあげられるほど認知度の高いツイードがドネガルツイード。ドニゴール川で手洗いされ、織られるドネガルツイードは、このアイルランドのドニゴール地方の農家で織られるホームスパンです。
アイリッシュツイード、ナップツイードなど、ドネガルツイードと同義。
ハリスツイード
ハリスツイードをはじめとするツイード素材、ドネガル(ドニゴール)ツイードなども広くは英国産といわれることも多いのですが、厳密にはアイルランド産。ツイードに分類される厚地の紡毛織物のなかでもハリスツイードは最も知られているツイードです。
スコットランドの北西部に位置するアウター・ヘブリディズ諸島のなかの「ハリス島」「ルイス島」で主に織られていたため、「ハリスツイード」と呼ばれるようになりました。地元の生活環境に根ざしたハリスツイードは、漁師さんが風の強い船の甲板上や、岸壁などで作業するための防寒衣として作られ続けてきたものなので、その暖かさは間違いのないもの。粗く太い手紡ぎ・手織りの紡毛糸を、ざっくり織ったものなはずなのに、風も通さず暖かいのは、服地の暖かさがどれだけ繊維内に空気を含むことができるかによるためです。
ハリスツイードが他のツイードに比べて高い人気を持つのは、ハリスツイード協会(The Harris Tweed Authority)による徹底した品質管理にあります。このハリスツイード協会は2011年に発足100年を迎え、通常白地に十字のハリスツイード協会認定タグが、この年のみは金字に黒。生産農家によって家内工業的に生産されるハリスツイードは、この協会によって厳しく管理され、その検査に合格したハリスツイードにのみ、この生地タグが付けられるなかなか存在感もあり、貴重なものです。
ハリスツイードはウォームビズの傾向から、近年以前にも増して人気があり、その素朴な風合いはブリティッシュスーツやクラシコスーツとも相性が良く、ディテールの変化にも柔軟に対応してくれる素材。主には、ハリスツイードジャケットとして着られることが多いですが、パンツにも裏地を付けるパンツ総裏仕立てのハリスツイードパンツ、ハリスツイードベスト付き3ピーススーツ、ハンチング、バッグなどその組み合わせ方も多いです。
ツイード
ツイードはスコットランドのツイード河流域を原産地とする厚手の紡毛織物。
ツイード河で羊毛の汚れを洗っていたことからこの名前が付けられたとされています。 手紡ぎの紡毛糸をあらかじめ、いろいろな色に染色しておき、杉綾(ヘリンボーン)や千鳥格子(ハウンドトゥース)などの模様で織り上げます。 そのほとんどはツイードが語源とされるツイル(綾織り)で織られ、一部には平織りのものも見られますが、製織後、縮絨起毛させないため、織り目がはっきりとあらわれ、独特の粗くざっくりとした風合いが特徴的。
もともと、ツイードは英国スコットランドの生活・風土に密着した、それぞれの地方独特の織物ですが、現在ではヨークシャーツイードなどをはじめとし、工業生産的に大量生産される、その風合いをツイード風に織り上げたざっくり感のある素朴な厚地織物全般をさして使われることが多いです。
秋冬のカジュアル向きの服地として、ツイードといえばその代名詞とされるハリスツイード、ドニゴール(ドネガル)ツイード、エジンバラツイード、シェトランドツイード、チェビオットツイードなどその産地とされる地方の名前を付けられた数種類のツイード素材は、オーダースーツ、オーダージャケットの分野でも特に高い人気を持っています。
スポーティーな感覚が持ち味で、2009年からイギリスではじまった「ツイードラン」はツイード製のスーツ、ジャケットなどを着用して自転車で走るイベント。2012年10月20日には、「Tweed Run Tokyo 2012(ツイードラン 東京 2012)」が、東京でも開催され、およそ150人の参加者が秋冬のファッションイベントを楽しみました。